2018年11月17日(土)

テスラがサウジ接触 非公開化に大義はあるか

2018/8/14 14:01
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【シリコンバレー=白石武志、ニューヨーク=宮本岳則】株式の非公開化を検討している米テスラは13日、株買い取りの資金源としてサウジアラビアの政府系ファンドと接触していると明らかにした。ただ、唐突なツイッターでの表明を発端に動揺する株式市場への説明は後手後手に回っている。非公開化はテスラを悩ませてきた空売りヘッジファンドへの強力な反撃となるが、それだけが理由では株式市場は納得しない。

ツイッターでテスラの株式非公開化の方針を表明したマスクCEO=ロイター

マスク氏の8月7日のツイート。テスラの株式を1株当たり420ドルで買い付け、非公開化する旨が記されている。

■2年前から交渉していた?

イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は8月7日、テスラの株式を1株当たり420ドルで買い付け、非公開化するとツイッターで公表した。「資金は確保した」とも発信。突然の情報開示にもかかわらず、計画が進展していることをうかがわせる内容で、株式市場には戸惑いの声が広がっていた。

その後マスク氏は13日に自社ブログに投稿。約2年前にサウジのファンドから株式非公開化に向けた資金提供の打診があり、その後、複数回にわたって会合を開いたと明らかにした。最近になって同ファンドは市場を通じてテスラ株の約5%を取得し、交渉の前進を求めてきたという。

7日付のツイートに関しては、一部の投資家が投稿内容が虚偽であるとして集団訴訟を始めたと報じられている。マスク氏は「資金は確保した」とツイートした根拠を示すことで、こうした動きをけん制する狙いとみられる。

ただ、こうした根拠は後づけの感も否めない。ブログでの「釈明」では、ファンド側の度重なる提案を受け入れる形で株式非公開化を決断したと、受け身ともとれる説明だったが、これまで退けてきた提案をなぜ今採用したかは触れなかった。

■空売り勢には大打撃

株式非公開化の大きな動機の1つが、テスラが悩まされてきた空売り勢への強力な反撃であることは確かだろう。マスク氏は8月7日に従業員に送った電子メールの中で、短期利益を求めがちな株式市場を批判している。念頭には、テスラの計画未達で株価が下落するのを見越して空売りを仕掛ける「ショートセラー」の存在がある。

エンロンの不正会計を見抜いたジム・チェイノス氏、サブプライムローン(信用度の低い個人向けの住宅融資)市場の崩壊をいち早く予想したスティーブ・アイズマン氏――。著名投資家が相次ぎテスラ株の空売りを公言するなど、複数のヘッジファンドがカリスマ起業家に群がる異常事態となっていた。

トムソン・ロイターによると、テスラ株の発行済み株式数に対する空売りの比率は直近時点で2割に達する。単純計算では120億ドル(約1.3兆円)を超える額だ。個人情報の不正流用問題を抱えるフェイスブックでさえ空売り比率は1%程度にすぎない。

株価を高値で買い取る非公開化はこうしたヘッジファンド勢にとって痛手だ。不利な条件で強制的に空売りを手じまいさせられる可能性があるからだ。非公開化案の公表による株価の上昇で、すでに損失を抱えたファンドも多いとみられる。

■安定株主を残したい思惑

市場では非公開化の実現性を巡っても議論が起きている。テスラ株の13日終値は356.41ドル。マスク氏のツイート前日の終値よりは高いものの、提案した買い取り価格(420ドル)に届かない。市場参加者の中に懐疑派がいる証しだ。

論点の一つが資金調達計画。マスク氏は借り入れではなく増資に頼る考えを示しつつ、自らの経営の主導権は手放さない方針を示している。具体性に欠ける内容で「(マスク氏のブログを読んで)より非現実的な話のように思えてきた」(米ジョーンズトレーディングのマイケル・オルーク氏)との声もあがる。

マスク氏は「非公開化後も3分の2の株主が残る」との見通しを示している。だが、米調査会社ファクトセットによるとテスラ株の機関投資家の保有比率は4割。上位株主には米Tロウ・プライスや英ベイリー・ギフォードなど長期志向の有力運用会社の名前が並ぶ。「流動性に乏しい株には保有制限がかかる」(RBCキャピタル・マーケッツ)のが一般的で、株式の一部売却を迫られる可能性がある。

マスク氏は先週末、ツイッターで「テスラの商品に短い半ズボン(ショートショーツ)を加える」と投稿するなど、ショートセラーらをからかうような発言を続けている。仮にマスク氏と一部の投資家との反目が株式非公開化の主な要因だとすれば、株主らの賛同を得ることは一段と難しくなる。

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