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豊島逸夫の金のつぶやき

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トルコ通貨危機の正体

2018/8/14 9:06
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真夏の世界市場を震撼(しんかん)させているトルコ通貨危機は世界的経済危機に発展する可能性があるのだろうか。

全体を見渡せば、トルコ通貨危機は日米欧量的緩和政策の「副作用」だ。

先進国の主要中央銀行によりばらまかれた過剰流動性は、洪水のごとく新興国になだれ込んだ。特にトルコのような外資依存の国は、量的緩和マネー依存症の症状を呈した。ところが、中銀が量的緩和縮小・終了を宣言するや、マネーの洪水は怒濤(どとう)のごとく逆流を始める。

結果的に新興国に残ったのは借金の山だ。トルコでも企業のドル建て・ユーロ建て債務がリラ急落(ドル急騰)の影響をもろに受けている。こうなると、トルコに融資してきた欧州大手銀行の不良債権が懸念される。

市場が神経質になる理由には日銀もからんでいる。世界のマーケットが日銀も流動性供給のバルブを閉めるタイミングに身構えているとき、トルコ問題が勃発したからだ。

トルコリラ急落の影響は庶民生活も直撃している。トルコは中東だが原油生産国ではなく内需主導の原油一大消費国だ。ドル建て原油価格が上昇すれば、国内物価も連れて上昇する。

インフレ、自国通貨安に危機感を抱いた国民は一斉にドル・ユーロ・金などの外貨建て資産に殺到する。「外貨預金封鎖」の噂まで飛び交う。対するエルドアン大統領は国民に「ドル・ユーロ・金を持っているなら、リラに換えよ」と叫ぶ。

しかし、そもそも、エルドアン大統領の強権金融制財政政策に不安感を抱いた市場がトルコリラ売却に動いた経緯がある。娘婿を財務大臣に任命。自国通貨急落中に利上げ拒否を公言してはばからない。国際通貨基金(IMF)融資も拒否。果ては、西側陰謀説にまで言及している。

同じく「利上げ嫌い」のトランプ米大統領も、エルドアン氏に宣戦布告している。トルコと「経済戦争」を語り、トルコからの鉄鋼・アルミ輸入への関税を2倍に引き上げた。これには独自の理由がある。反エルドアン大統領のクーデターが勃発したとき、共謀したとの疑惑で、米国人牧師をトルコ当局が軟禁しているからだ。選挙の大票田である米国キリスト教福音派に属する牧師ゆえ、中間選挙を視野にトランプ氏も妥協はできない。かくして米トルコ関係が急速に悪化中だ。

そこで市場が懸念するのは地政学的リスク。ボスポラス海峡をはさみ、アジアと欧州のまさに要衝に位置するイスタンブール。ロシア黒海艦隊にとっても、死守せねばならぬ狭い海峡だ。トルコ国内には米軍基地もあり、北大西洋条約機構(NATO)の最前線となっている。しかも300万人を超えるといわれるシリア難民を国内にかかえる。

エルドアン大統領は欧米が支援せねば、「他の選択肢もある」と明言。ロシアに接近中だ。中国も虎視眈々(たんたん)と「火事場騒ぎ」に「白馬の騎士」役を演じる機会をうかがっている本音が透ける。なんといってもトルコは一帯一路の要衝である。

かくして、トルコ発異変が世界の市場に波紋を広げている。外為市場ではドルインデックスが94台から96台まで急騰。円は逃避通貨として買われているが、ユーロと新興国通貨は売られているので「ドル高・円高」となっている。ニューヨーク市場では「安全通貨は米ドル。ドルがキング(王様)」との認識も根強い。

トルコ中央銀行も通貨不安に対して、有力な打つ手がない。「利上げ」という決定打を大統領の「利上げ拒否」発言で封じられている。小手先でリラを支える措置を発表して一時的に小康状態になっても、市場は疑心暗鬼だ。中央銀行をも自らの傘下に置くごときエルドアン氏の言動に、「政治的中立性」が強く疑われる。「資本規制」発動の有無も議論されている。

債券市場では一時3%の大台を再突破したばかりの米10年債利回りが2.8%台にまで急落している。安全資産として米国債が買われたからだ。短期政策金利については、9月利上げへの影響も注目されている。株式市場も無視できず神経質になっている。

とはいえ、懸念される連鎖リスクは限定的だろう。国際金融市場におけるトルコの存在感も決して大きくはない。米国利上げが誘発する新興国リスクも市場は「副作用」として覚悟してきた。米国経済は絶好調なので、この程度の経済ショックでは成長路線・利上げシナリオは崩れない。市場参加者の多くが夏季休暇中ゆえ、資産価格変動が誇張された感がある。金融正常化、量的緩和巻き戻しの過程では避けて通れない道とみるべきだろう。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
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