ビッグデータ、分散処理で敷居低く
欧米IT企業キーマンに聞く(1) 米クラウデラ ダグ・カッティング氏

2018/8/14 7:00
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

人工知能(AI)やビッグデータ分析の普及により、情報技術(IT)の活用法が大きく変わろうとしている。最新の技術トレンドと今後の行方について、各分野をリードする欧米の有力IT企業のキーマンに聞く。初回はビッグデータ分散処理ソフトの「Hadoop(ハドゥープ)」を開発した米クラウデラのチーフアーキテクト、ダグ・カッティング氏。

――ハドゥープの登場でビッグデータブームに火が付きました。

「ハドゥープは私が米ヤフーにいた2006年にオープンソース(公開仕様)ソフトとして作られた。米グーグルが大量のデータを検索するのに使っていた『マップリデュース』の技術を学会で発表したのを受け、オープンソースで同様のソフトを作れば、多くの人の役に立つと思った」

米クラウデラのチーフアーキテクト、ダグ・カッティング氏

米クラウデラのチーフアーキテクト、ダグ・カッティング氏

――どんな形で利用が広がったのですか。

「ヤフーがまず資金を提供したが、最初の利用者はフェイスブックやツイッター、リンクトインといった米国のウェブ企業だった。大量のデータを処理するのに彼らも困っていたのだろう。それからはクチコミであっという間に広がった」

――ソフトの名称が印象的です。

「実は当時小さかった私の子供が象のぬいぐるみに付けた名前だ。特に意味はない。08年にソフトに名称を付けることになり、名前と一緒にその象をマスコットキャラクターにした。彼は17歳になり、この秋から大学でバイオ技術を研究する」

米クラウデラ(Cloudera) ビッグデータの分散処理ソフト「ハドゥープ」の運用会社として米ヤフーの出身者らが08年に設立。ビッグデータ分析のリーダー的存在。昨年4月に上場、時価総額が20億ドル(約2200億円)に達した。今年1月期売上高は前年比41%増の3億3700万ドル。従業員数は約1700人。カッティング氏は全体の技術戦略を担う。

――なぜ処理が速いのですか。

「演算を非常に多くのコンピューターに分散し、同時に処理するからだ。そのためにデータのファイルを分散し、再び結果を集めてくる。処理を順番に行う従来のデータベースソフトとはそこが異なる。ハードウエアも市販の安いものでいいので、コストもかからない」

――ビッグデータ分析には「マップアール」というソフトもあります。

「基本的な構造は同じだが、彼らは早い段階で独自のファイルシステムを構築し、ソフトを商用化しようと考えた。一方、クラウデラは無償でソフトを提供し、運用やサポートで収入を得ようとした。実は私は08年の会社設立時にはオープンソースの運営の方に専念しており、1年後に入社した」

――今後のビッグデータ市場の動向をどう予想しますか。

「我々のソフトが登場してから12年になるが、市場は今も急速に拡大している。ウェブ企業だけでなく、製造や流通、金融、通信、航空、ヘルスケアなど大企業が使うようになってきたからだ。どの分野でもデータ量が増え、その分析が必要になっているためだろう。数年後には400億ドル(約4兆4千億円)の市場になると思っている」

――日本市場への広がりをどう見ていますか。

「日本に進出したのは2012年で、楽天やヤフー、ドワンゴといったITや金融、ゲーム企業などに広く浸透している。そのため日本語ができる社員を大量投入した。潜在的な伸びは大きい」

――最近はAIの話題で持ちきりです。事業への影響は。

「AIとビッグデータは実は補完関係にある。データ分析が進めばその分、AIが進化する。今後の課題は自然言語処理への対応と、もう1つはデータが悪用されないようにすることだ」

(聞き手は編集委員 関口和一)

[日経産業新聞 2018年8月14日付]

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