2019年9月22日(日)

人の目に代わるAI、製造現場で大活躍 Rist

2018/8/14 7:00
保存
共有
印刷
その他

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

工場の検査工程で製品の傷やゆがみを見逃さない。そんな「目の分身」を自在に作れる企業を目指し、先端技術を使って大手企業との協業を進めるのがRist(リスト、東京・目黒)だ。人工知能(AI)を駆使し、繊細な画像処理を自動化できる技術を持つ。人手不足で強まる製造現場の省人化需要を追い風に、成長を加速する。

「営業を含めてみんながエンジニア。ものづくりがベースにある」。実質的拠点の京都市内のオフィスビルでRistの遠野宏季社長(27)は自信満々に語った。同社はこれまで人が目視で担ってきた作業を自動化する技術を持つ。深層学習(ディープラーニング)を使い、製造業や医療用途、スポーツ分野などあらゆる画像や動画の解析を手がけ、人間の目に取って代わるシステムを開発している。

Ristの遠野社長は大手企業との協業を加速させる。

Ristの遠野社長は大手企業との協業を加速させる。

設立からわずか2年で矢継ぎ早に大手と協業している。3月には自動車用バックミラー製造大手の村上開明堂のラインで導入された。製品名は「ディープインセプション」と呼ばれ、ディープラーニングを用いて、へこみや傷、汚れなどを発見、分類する。従来は作業員が目視で確認する必要があったが、同システムを用いると同様の作業の4分の3を自動化できる。ミラーの製造ラインの最終工程に設置した。

印刷業界にも手を広げている。6月に凸版印刷と印刷物とデータの誤差を判定するシステムの開発を開始。業務用印刷の場合、印刷物と元データとの間に「ノイズ」と呼ばれる差異が生じることがある。凸版印刷は印刷物の検査ノウハウを提供し、Ristが持つAI技術と組み合わせてノイズを発見するシステムを開発する。

従来の目視点検に比べ検査員の負担を9割減らすのが目標。2019年内の製品化を目指す。同様のシステムを印刷業界に加え、半導体製造におけるキズなどの検査工程でも導入したい考えだ。

Ristの強みはディープラーニングの技術に基づいて大手企業と密に開発を進める点だ。「パッケージ売りはしたくない」と遠野氏。大手からすれば「オープンイノベーション」を推進できる一方、Ristは共同で導入を進めデータやノウハウの蓄積を進められる。

「1段階目は業務提携、2段階目は横展開」と遠野氏。自動車や印刷の大手企業とシステム開発を手がけてノウハウを蓄積し、それらの技術力で他の業界でも目視検査システムを導入していく戦略だ。そのほかにも「視覚情報に関連する事業はすべて担える」とし、現在は野球場などの選手の動きを分析する事業を受託。医療分野においても地域の医療機関と連携し、眼底画像の検査システムも開発している。

Ristを設立したのは16年8月。遠野社長は京都大学出身で、学部では化学を専攻していた。「夢は科学者だった」と遠野氏。研究者になるために京大に入学した。大学院で医学と工学を連携させる博士課程プログラムに参加し病院実習などを経験。「新しいアイデアで世の中を変えたい」と考えるようになった。当時の担当教官に「遠野は死んだと思ってください」と伝え、大学を休学。独学でプログラミングの勉強を始めたという。

村上開明堂の生産ラインに導入したシステム

村上開明堂の生産ラインに導入したシステム

先輩の紹介でAIスタートアップ、エクサインテリジェンス(現エクサウィザーズ)の創業に携わった。その中で現在Ristの主力であるAIの開発ノウハウを学んだ。半年後、同社を離れRistを立ち上げた。最初のころはあらゆることに手を出したが、AI関連の技術に特化した。

「事業に自信があるなら借金をすればいい」と語る遠野社長。実際のところベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などから接触はあるが是々非々で望んでいる。株式公開について、「1つの選択肢」としつつも、「M&A(合併・買収)などで引き継いでもらい事業拡大してもらうのもあり」と割り切る。

18年5月期の売上高は6千万円だが、19年5月期は1億5千万円、21年5月期で約7億円と着実な拡大を見込む。画像処理半導体(GPU)の世界首位、米エヌビディアが立ち上げたAIスタートアップの企業支援プログラムにも選ばれた。製造現場や人間に代わるテクノロジーが求められている現状を商機と捉え、若い企業が事業の拡大を図る。(京都支社 赤間建哉)

[日経産業新聞 2018年8月1日付]

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。