日航機墜落33年 慰霊登山の遺族「風化させない」
乗客乗員520人が犠牲になった日航ジャンボ機墜落事故から33年を迎えた12日、墜落現場となった群馬県上野村の御巣鷹の尾根を遺族らが登り、犠牲者を追悼した。

遺族らは早朝から険しい山道を歩き、1時間ほどかけて御巣鷹の尾根の「昇魂之碑」を目指した。この日の上野村は肌寒く、一時は強い雨が降るなか、つえを手にゆっくり歩みを進める姿も目に付いた。遺族らは碑に着くと持参した花を供え、静かに手を合わせていた。
今年は82家族272人が登山し、三十三回忌となった17年より80人以上少なかった。
父の孝之さん(当時29)が犠牲になった神戸市の会社員、小沢秀明さん(32)が母親の紀美さん(62)と毎年訪れていた慰霊登山に、今年は6月に入籍した妻の裕美さん(32)が加わった。秀明さんは、孝之さんの遺体が見つかった場所に立つ墓標に向かって「結婚しました」と報告した。

出張で搭乗していた孝之さんが事故に遭ったのは紀美さんとの結婚の1年10カ月後。秀明さんは生まれていなかった。紀美さんは「優しくてすてきな旦那さんだった。幸せな時間だった」と振り返り、秀明さんは「自分たちがどんな家庭になるか楽しみに見ていてね」と孝之さんに呼びかけた。
東京都品川区の会社員、滝下茂則さん(46)は、親戚宅に向かう一人旅で搭乗していた弟の裕史さん(当時11)に手を合わせた。「お兄ちゃんの後を付いて歩いてきて、かわいい弟だった」
中学1年の長女、結香さん(12)はこの日が2度目の慰霊登山。前日には、墜落したジャンボ機の残骸などを展示する日航の安全啓発センター(東京・大田)に結香さんを連れて行った。「事故を知らない世代も多くなった。風化させないよう、娘に事故のことをしっかり伝えていきたい」と弟に誓った。

午後6時からは遺族や関係者229人が参加し、追悼施設「慰霊の園」で慰霊式典が開かれた。上野村の黒沢八郎村長は「事故の戒めを末代まで伝えていくとともに、世界に向けて空の安全を発信していくという使命を胸に納めていく」とあいさつ。墜落時刻の午後6時56分には犠牲者と同じ数の520本のろうそくに灯をともし、黙とうをささげた。
社長に就任して初めての8月12日を迎えた日航の赤坂祐二社長は午後、昇魂之碑に献花。「これまで以上に重たいものを感じた気がする。航空の安全をしっかり守っていきたい」と報道陣に語った。




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