2018年8月22日(水)

霞が関、迫られる人事改革 国家公務員、65歳に定年延長

経済
政治
2018/8/10 20:00
保存
共有
印刷
その他

 人事院は10日、国家公務員の働き方改革を進めるための具体的な方針を公表した。65歳までの定年延長や長時間労働の是正に向けた残業時間の上限規制の導入が柱だ。多様な働き方に対応できるようにして人材を確保する狙いだが、改革を機能させるには、国家公務員の人事・給与の仕組みを広範囲に見直す必要がありそうだ。

 政府は2月に定年延長の方針を決め、人事院に意見を求めていた。同日に人事院が政府と国会に提出した意見書では、現在60歳を65歳にするべきだとしている。民間企業の水準に合わせて60歳以上の職員の給与は60歳前の7割が妥当とした。政府は来年の通常国会への関連法改正案の提出を目指す。定年は段階的に引き上げ、2033年度に完了させる方向だ。

 定年延長の背景にあるのが霞が関の人材不足だ。現在も65歳まで働ける再任用制度があり、再任用された職員数は18年度で約1万3千人とこの5年で2倍に増えている。

 しかし再任用職員の7割は主任・係長級で政策立案の中核ポストには就いておらず、また8割が短時間勤務だ。政府は現役時代の経験が十分に生かされておらず、人材不足を解消する切り札になっていないとみている。

 定年延長を機能させるには国家公務員の人事・給与システム全般を見直す必要が出てきそうだ。その一つは定員管理。再任用職員の多くが短時間勤務なのは、各省庁のフルタイム職員数に実質的な上限があるためだ。定年を延長しても定員が変わらなければ、新規採用の削減を迫られる本末転倒な事態も想定される。

 人事院は申し入れの中で定員管理を見直し、必要な規模の新規採用を計画的に継続できるように対応を求めた。ただ公務員の人数を増やすことには国会審議などで反対意見も予想される。

 意見書では、60歳以上の職員の給与引き下げは当分の間の措置とし、60歳前の給与カーブのあり方などを検討することも求めた。65歳定年を前提に賃金カーブのピークを後ろ倒しさせるような制度のあり方を探ることになるとみられるが、その場合、公務員の総人件費を増やすのか、総人件費は据え置き、その範囲内で賃金カーブを調整するのかも論点になる。

 人事が滞らないように原則60歳に達すると管理職から外す「役職定年制」も導入する。専門性が高く後任を見つけにくい職種などに限って留任を認める「特例任用」の制度も設けるように求めた。

 働き方改革のもう一つの柱が、長時間労働の是正にむけた人事院規則の見直しだ。国家公務員には労働基準法が適用されないので、人事院規則で労働条件などを定める。来年4月から原則として月45時間かつ年360時間の残業上限を設ける。国会対応や外交などで繁忙が左右される部署は月100時間かつ年720時間を超過勤務の上限とする仕組みに改める。

 ただ「抜け穴」もできる。来年4月に民間企業に設定される残業時間の上限規制では、年720時間を超えて働かせた企業には罰則があるが、国家公務員には罰則はない。さらに、重要法案の立案や大規模災害の対応などやむを得ない場合は上限を超えられるとしたので、国会対応を理由とした長時間労働が残る可能性が大きい。

 上限時間を超えた場合は事後的に検証する仕組みをつくるとしており、長時間労働の野放しを避ける配慮はされているが実効性は不透明だ。

 中央省庁の長時間労働を是正するには、国会議員の各省庁への質問通告をもっと前倒しするなど国会改革を進めることも必要になる。

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報