IHIが愛知工場を閉鎖、45年の歴史に幕

IHIは10日、愛知工場(愛知県知多市)で最後の工事となった液化天然ガス(LNG)タンクの完工式を開いた。9月に製品を引き渡し、完全に閉鎖する。1973年に国内最大級の「100万トンドック」を備えた最新鋭造船所として開設した同工場は45年の歴史に幕を下ろした。
最後の日の終業時刻を待って開いた式典には、工場に所属する社員やOBら約200人が出席した。喜田章裕工場長は「皆さんのおかげで立派な仕事に臨むことができた。愛知工場の最後にふさわしい、胸を張って世に出せるタンクを完成できた」と述べた。
愛知工場は大型の外航商船を中心に手がけてきた。開設当初は積載量27万トン級の大型石油タンカーを建造。その後はLNGタンカーやばら積み船も建造した。ただ、造船業の景気の波の影響を受け、3度の船舶建造停止を経験するなど波乱に満ちた工場でもあった。
「東京湾アクアライン」のトンネル工事に使われた掘削機や大型海洋プラントも生産した実績があり、日本の経済成長を支える役割を担った。一時は世界シェアの過半を占めるなど隆盛を誇った日本の造船業も、近年は韓国や中国に押されて劣勢を強いられている。愛知工場の閉鎖は日本の重工業の構造転換を象徴する事例ともいえる。
工場従業員は全員をIHI内で配置転換して維持する。「社員は当初は戸惑いもあったようだが、新しい成長分野に移っていこうと切り替わっている」(喜田工場長)
70万平方メートル超に及ぶ広大な跡地の活用法は決まっていない。すでに近隣の他社に資材置き場などとして貸しており、今後は賃貸もしくは売却する方向で検討している。(企業報道部 朝田賢治)
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