2018年12月16日(日)

英ポンド約1年ぶり安値に 「合意なき離脱」懸念拡大で

2018/8/10 18:30
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【ロンドン=篠崎健太】英国で欧州連合(EU)からの離脱を巡り、何も合意できずに単一市場から締め出される「無秩序離脱」の懸念が広がってきた。離脱交渉が停滞する中、何も決まらないまま2019年3月末の期限切れを迎えるシナリオを警戒する発言が閣僚から相次いでいる。通貨ポンドは対ドルで約1年1カ月ぶりの安値水準を付け、万が一の可能性に金融市場も気をもんでいる。

2日の利上げ後もポンド安が進んだ(英ロンドンのイングランド銀行本店)

外国為替市場でポンドは10日、一時1ポンド=1.27ドル台前半と17年6月下旬以来の安値水準に沈んだ。4月に1.43ドル台後半と今年の高値を付けた後は右肩下がりだ。英国の通貨別の貿易シェアで半分弱を占めるユーロに対しても、ポンド安がじりじり進んでいる。

2日には英中央銀行イングランド銀行が9カ月ぶりに政策金利を引き上げたが、支えになるどころか、皮肉にも利上げ後にポンド安が加速した。「合意なき離脱の話が増える中で、投資家は売り持ち高を再び積み上げている」(仏金融大手ソシエテ・ジェネラル)

「合意なき離脱の可能性は60対40」。ポンド安の一因になったのがフォックス国際貿易相の発言だ。5日付の日曜紙サンデータイムズのインタビューで「欧州委員会のかたくなな姿勢が我々を合意なし(の離脱)に追いやっている」と指摘した。交渉の進展へ歩み寄ろうとしないEU側を批判する中で言及した。

メイ英政権は7月、離脱後の関係についての交渉方針を示す「白書」を公表した。モノの自由貿易圏をつくって摩擦のない関係を保つなどと提案したが、EU側は英国に都合のいい枠組みに否定的だ。今のところ合意への糸口はみえない。それどころか欧州委は加盟国の企業や政府に対し、無秩序な離脱に備えるよう要請を出す始末だ。

産業界や市場は、EU離脱後も激変緩和の「移行期間」が導入され、ひとまず20年末までは現状が保たれると見込んでいる。だが離脱条件で合意できなければ、これまで何とかまとめてきた移行期間の暫定合意も水の泡になる。合意は審議の期間も考えると10月までには結ぶ必要がある。

ハント外相も1日、訪問先のオーストリアで「合意なき離脱に思いがけず向かっている」と語った。無秩序離脱のリスクに警鐘を鳴らすこうした発言は、EU側の譲歩を引き出すためのメッセージとみられる。本気に捉える向きは少ないとはいえ、交渉が暗礁に乗り上げていることへの危機感の裏返しに他ならない。

英首相官邸の報道官は6日、無秩序離脱を警戒する閣僚の発言について「合意できる可能性が高いと信じ続けている。英国だけでなく他のEU27カ国の利益でもある」とコメントした。

時間切れが刻々と迫る中、産業界はいらだちを濃くしている。英経営者協会(IoD)は3日付の声明で、英企業はEU離脱の準備ができていないと指摘した。「合意なき離脱の可能性が残る限り、政府は積極的に対応するための助言をすべきだ」と訴え、企業に十分な情報を提供しない政府にクギを刺した。

イングランド銀行のカーニー総裁は3日、BBCのラジオ番組で、合意なきEU離脱について「比較的低いが可能性はある」と述べた。金融システムの円滑な維持に努めると強調した。

だが、もしもの場合の金融政策のかじ取りは極めて難しくなる。英経済の下支えへ利下げや量的緩和策の拡大を迫られる一方、金融緩和の再強化はポンドをさらに下押しすることになり、輸入品の値上がりを通じてインフレに弾みをつける可能性が高いからだ。合意なきEU離脱が現実となり市場に混乱が生じる事態となれば、英中銀は深刻なジレンマに直面する。

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