2国間かTPPか、日本板挟み 日米貿易協議初会合 - 日本経済新聞
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2国間かTPPか、日本板挟み 日米貿易協議初会合

【ワシントン=飛田臨太郎】日米両政府は閣僚級の貿易協議(FFR)の初会合を9日(日本時間10日)、開いた。米は自由貿易協定(FTA)を念頭に2国間交渉を迫った。10日も協議を継続した。米との対立回避へFTA交渉を認める声も浮上するが、日本が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)などの多国間協定の求心力が弱まる懸念もある。

9日の協議は事務方らも参加する全体会合から始まった。同会合は20分間ほどで終わり、その後は茂木敏充経済財政・再生相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が2人きりで約2時間話し合った。協議後、茂木氏は「互いの考え方の理解も深まった」と述べた。

FFRに向けて日本側は入念に準備を進めてきた。茂木氏は事前に安倍晋三首相と2人で会い、戦略を打ち合わせた。全体協議に参加した事務方には、財務省の浅川雅嗣財務官や山崎和之外務審議官ら各省庁の次官級が顔をそろえた。

茂木氏はまずTPPへの参加を訴えた。米国内にはオーストラリア、カナダなどの11カ国のTPPが発効すれば、日本の農産品市場でシェアを奪われかねないとの懸念の声がある。茂木氏はこうした懸念を念頭に、9日も「TPPが日米双方に最善だ」と説明した。だが、ライトハイザー氏は「トランプ大統領の考えは知っての通りだ」と返した。

焦点の自動車関税をめぐっては、茂木氏は引き上げを回避するよう説得したが、米側は是非について明確な言及は避けた。日本の自動車メーカーに甚大な影響がでる関税引き上げを取引材料に、牛肉などの農産品の市場開放で果実をつかむシナリオも見える。

日本政府内には、農産品の関税の引き下げ水準をTPPと同じにできるなら「対米FTA交渉を容認してもよい」との声がある。北朝鮮の核開発問題や日本人拉致問題を抱え、経済面での米国との対立は避けなければならないとの判断だ。

ただ、日本は米抜きのTPPを主導している。最近では、米国発の保護主義の広がりに多国間で対抗したいとの思惑から、タイやコロンビアも新規加盟を検討し始めた。日本が米とFTAに乗り出せば、TPPの求心力が低下しかねない。

欧州連合(EU)とも7月に経済連携協定(EPA)に署名したばかり。米国の自国優先主義への包囲網をEU各国ともつくる戦略を描いている。日本は多国間協定重視と対米配慮のはざまでジレンマに陥る構図になりつつある。

トランプ大統領には、秋の中間選挙を前に目に見える成果を打ち出したい思惑がある。9日の協議は決裂を避け、ひとまず10日に延期したが、米がさらに強硬な要求をしてくるリスクはある。

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