慶応大、スキルス胃がん、増殖原因を特定 治療薬候補も
慶応義塾大学の佐藤俊朗准教授らは、治療が難しいとされる「スキルス胃がん」など一部の胃がんで治療の標的になるたんぱく質を突き止めた。このたんぱく質を阻害すると、がん細胞が増殖しにくくなることをマウス実験で確認した。他のがんで臨床応用が進む治療薬を使える可能性がある。
成果は10日までに米科学誌「セル」に掲載された。
胃がんで死亡する日本人は2016年で4万人超で、がんによる死亡原因の3位。減少傾向にあるが、なかにはスキルス胃がんなど難治例もある。がんが塊にならず散らばるように増殖するため発見が遅れやすく、有効な治療法が見つかっていない。
胃の細胞が増殖するには「Wnt」など2種類のたんぱく質が必要とされる。ただ胃のがん細胞は正常な細胞などときれいに分けるのが難しく、がん細胞だとどのように増殖するのか分かっていなかった。
チームは細胞を立体的に培養する独自技術を応用し、胃がん患者のがん細胞だけを培養することに成功。遺伝子などを解析したところ、スキルス胃がんを含む約4割の胃がん患者で、Wntがあれば増殖することが分かった。
チームはがん細胞を移植されてから2カ月後のマウスに、Wntを阻害する化合物を投与。さらに3週間後に調べたところ、投与されたマウスは明らかにがんの増殖が抑えられていた。
Wntを狙う治療薬はすでに膵(すい)がんなどで臨床研究が始まっており、胃がんにも使える可能性がある。胃ではWntが正常な細胞にも必要だが、濃度を調整すればがん細胞にだけ効果を出せるとみられる。
チームは培養したがん細胞を使い、スキルス胃がんなどが発症するメカニズムをさらに詳しく調べる。