2018年12月17日(月)

筑波大など、iPS使わず心筋再生 遺伝子導入の新手法

2018/8/10 0:00
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筑波大学の家田真樹教授らは、iPS細胞を使わず心臓細胞の再生につながる新しい手法を開発した。心臓病患者の体内に特定の遺伝子を入れ、正常な心筋細胞を作る。まだ基礎研究の段階だが、臨床研究が近く始まるiPS細胞を使う心臓病治療に比べて簡単で安価な再生医療になる可能性がある。5~10年後の臨床応用を目指す。

遺伝子導入で作った心筋細胞の元になる細胞(緑色、細胞核は青色、筑波大学提供)

成果は米科学誌セル・ステムセルに9日掲載された。

心筋梗塞などの病気では心筋細胞が減る一方、心臓の形などを保つ「線維芽細胞」という拍動しない細胞が増えてしまい、心臓の血液を送る働きが低下する。症状を改善するには心筋細胞を増やす必要があるが、再生能力はない。

家田教授らは、心筋細胞が線維芽細胞から作れないか研究を試みた。マウスの線維芽細胞に58種類の遺伝子を導入したところ、背骨を作るのにかかわる「Tbx6」という遺伝子を入れた場合だけ心筋細胞が得られることが分かった。またヒトのiPS細胞にこの遺伝子を導入しても心筋細胞のもとになる細胞が作れた。

この方法を使えば患者の心臓にカテーテル(細い管)で遺伝子を導入し、心臓にある線維芽細胞から心筋細胞を直接作り、病気を治療できる可能性がある。今回の方法では患者の体外で心筋細胞を作ってから体内に戻す必要はなく、胸を開くような手術が要らなくなる。家田教授は「iPS細胞の課題を解決できる可能性がある」と説明する。

iPS細胞など万能細胞を使わず、患者の体内で病気の治療につながる細胞を直接作り出す技術は「ダイレクトリプログラミング」と呼ばれ、新たな再生医療として注目が集まる。iPS細胞を介さずに目的の細胞を直接作れるため、治療前の準備が簡単。拒絶反応やがん化のリスクが低いなどの利点もあり、九州大学や京都府立医科大学でも研究成果が相次いでいる。

新技術について、心臓の再生医療を研究する木村航・理化学研究所チームリーダーは「将来は(iPS細胞などとの)併用による相乗効果が期待できる」と評価する一方、「不整脈のリスクや心機能回復の効果、継続性など、安全性や有効性について今後検討する必要がある」と指摘する。

国内で心筋梗塞など心疾患の患者は100万人を超える。死因の2割と悪性新生物(がん)の3割に続く。心臓移植件数は少なく、治療を受けられないなどの課題もある。

訂正>10日0時0分に掲載した「筑波大など、iPS使わず心筋再生 遺伝子導入の新手法」の記事で「iPS細胞を使う治療では」とあったのは「今回の方法では」の誤りでした。(2018/8/10 18:30)

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