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ドタキャン料理は捨てない 持ち帰り客、ネット仲介

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

飲食店で予約したはずの客が連絡もなく来ない。用意した料理は無駄となり大損害。一方で、時間に余裕のないビジネスパーソンが夕食用に料理を持ち帰りたいという需要がある。コークッキング(東京・港)が目指すのは両者をつなぐプラットフォームの構築。川越一磨代表の「食品ロスを減らしたい」との強い思いが原動力だ。

コークッキングが提供する「TABETE(タベテ)」は、飲食店がその日に余った料理を割引価格で提供するフードシェアリングサービスだ。予約が突然キャンセルされた時、天候の悪化で客足が遠のいた時など、用意した料理が無駄になりそうな場合に、店舗はそのメニューをウェブサイトに登録する。

一方、利用者はスマートフォン(スマホ)などでウェブサイトにアクセスし、エリアを選び近くの店舗で余った料理を安く買える。コークッキングは販売金額に応じて手数料を35%店舗から受け取り、利益を得る。

店舗は食品ロスによる損害を低減できるほか、これまで接点のなかった顧客とつながりを持つことが可能になる。2017年9月から試験展開し、6月時点で個人店などを中心に約150店舗まで店舗数が拡大。ウェブ会員は毎月に2000~3000人増え続けており、想定を上回る2万人を超えた。

創業者で代表取締役の川越一磨氏(27)は、もともと食べることが好きだった。慶応大学在学中に和食料理人としてアルバイトを経験。14年にはサッポロホールディングスのグループ企業、サッポロライオン(東京・渋谷)に入社し、ホールで接客業務を担当した。

顧客が食べ終わった後の片付けで大量に捨てられる料理を見て、やるせなさを感じたことがタベテの原点となっている。

15年に大学時代の知人から、山梨県で利用者がイベントを開けるコミュニティーカフェをやらないかと誘われた。退社の翌日に山梨に移住。富士山の麓にある富士吉田市で店をオープンした。

転機は同年9月に開かれた甲府市のビジネスコンテストだった。料理を取り入れた企業研修やワークショップを開くビジネスプランを提案すると4位に入賞。その3カ月後にコークッキングを起業した。

起業から半年後、東京・青山の国連大学で毎週開かれるファーマーズマーケットを訪れた。廃棄されるはずだった野菜を具材にしたスープを来店客にふるまうことで食品ロスについて知ってもらう活動を見かけた。かつて感じたやるせなさがよみがえり、もっと食品ロスを減らせるはずだと本格的に考え始めた。

タベテのヒントとなったのはデンマークなど欧州8カ国で展開するアプリ「Too Good To Go」。レストランで残った料理を割引料金で購入できるサービスだ。ネットで偶然見つけ、デンマークに行って実際にサービスを試し、日本でもやってみようと決意を固めた。

Too Good To Goは貧困層向けのサービスだが、タベテではターゲットを20~40代の働く女性に設定した。貧困層に主軸を置いてしまうと、消費者に食品ロスの問題を自分事として捉えてもらえにくいとみた。一方、働く女性は口コミやネット上での影響力が大きい上、仕事が立て込んだ時など、料理に時間をかけられない場面も多い。

川越氏は「忙しいとスーパーやコンビニで食事を済ませてしまいがちだが、罪悪感を持つ女性も少なくないのではないか」と指摘する。捨てるのがもったいないと感じている飲食店と出来たてを簡単に食べたいという需要が一致するとみた。

難しかったのは店舗の開拓だ。タベテは料理が売れた際に、販売手数料を店舗側から徴収するビジネスモデルだ。営業は未経験で、体当たりで店に営業に行くのだが、手数料が高すぎると言われることが多かった。

「5店舗営業に行って、1店舗がサービスを使ってくれたら良い方」。はじめは店舗に納得してもらえないことに頭を抱えたが、試行錯誤を重ねるうち、本来売れなかった物が売れるようになる価値のあるサービスだということを伝えられるようになった。食品ロスを減らしたいという考え方に賛同してくれる店舗は手数料をあまり気にしないこともわかってきた。

「心が折れてしまうときはパッションがなくなったとき」。資金調達で困ったときもあるが店舗で働いたとき、捨てていた食品を見てモヤモヤとした感情が忘れられない。今でもこれが事業拡大への原動力だ。

「自給率が低いこの国で食材をムダにしていられない」。百貨店に取り組みを広げることなど食品ロスを減らすための新たなアイデアに思いを巡らしながら、きょうも走り続ける。(柴田奈々)

[日経産業新聞 2018年8月10日付]

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