2018年10月15日(月)

トルコ経済深まる苦境、動けぬ中銀 米対トルコ制裁から1週間

トルコショック
中東・アフリカ
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2018/8/9 19:00 (2018/8/9 21:25更新)
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【イスタンブール=佐野彰洋】トルコ在住の米国人牧師拘束問題を巡り、トランプ米政権が対トルコ制裁を実施してから8日で1週間が経過した。この間、トルコのエルドアン大統領も報復措置を表明。北大西洋条約機構(NATO)加盟国間の異例の対立を受け、金融市場ではトルコリラや国債の相場が過去最安値を更新した。トルコ経済の苦境は深まるが、利上げを嫌う大統領の圧力下にある中央銀行は通貨防衛に動けずにいる。

8日には、牧師拘束問題を巡る高官協議が米ワシントンで開かれたが、不調に終わったもようだ。これを受け、9日リラは一時1ドル=5.45リラ台まで急落し、過去最安値を更新した。米国が追加制裁に動く懸念も浮上。対立が長引けば、経済の苦境は本格的な危機に転じる恐れもある。

地元メディアによると、大手自動車リース会社のフリートコープは2日までに営業を停止し、2017年末時点で3億ユーロ(約385億円)の負債を抱え、経営破綻した。「(同社から)買い取った車を銀行に差し押さえられそうで困っている」――。中古車業者からはこんな悲鳴が上がる。

年初からのリラの下落率は対ユーロで約27%、対ドルで約30%に達する。外貨建ての債務負担が膨らむ一方で、中古車市場で車両を売却する際に得る収入も外貨換算で大きく目減りし、赤字が拡大。資金繰りに行き詰まったとみられている。

原油価格の上昇や通貨安によるコスト増に直面しながら、政府が価格改定を規制する電力。住宅販売の落ち込みや商業施設やオフィスの過剰供給に直面する不動産・建設。こうした業界の債務返済が滞れば、銀行経営の重荷となって金融システムの健全性を脅かすとの懸念が膨らんでいる。

経常赤字国のトルコでは官民の対外債務残高は国内総生産(GDP)比5割強の4666億ドル(約51兆8千億円)に達する。金融機関の信用力が低下すれば、海外からの協調融資や社債の借り換えが滞りかねない。

それなのに、米長期金利が上昇し新興国投資の選別が進む局面で、トルコはトランプ米大統領による牧師解放要求を突っぱね、米国との深刻な対立を抱え込んだ。

1日、米財務省はトルコの内相と法相を資産凍結などの制裁対象とした。これに対抗し、エルドアン氏は4日、米国の2閣僚を制裁対象とすると表明した。

リラ相場は連日、過去最安値を更新。10年債利回りは7日、一時過去最高の約20%に上昇(価格は下落)した。リラが1日で5%以上急落した6日、トルコ中銀は市中銀行が中銀に預ける外貨準備率の上限を引き下げる小手先の対応に終始。かえってリラ売りが加速した。

中銀は前回7月下旬の金融政策決定会合で市場が確実視していた利上げを見送った。一方、この据え置きの直後には年末のインフレ見通しを8.4%から13.4%に引き上げたが、7月のインフレ率は約16%に達しており、楽観的すぎるとの批判を浴びている。

中銀のちぐはぐな対応に透けるのは「金利の敵」を公言するエルドアン氏の圧力だ。4~6月の利上げで政策金利は年17.75%に達し、企業向けの貸出金利は加重平均で21%を超えた。19年3月に地方選を控え、景気を冷やすこれ以上の利上げは許容しがたいのだ。

金融市場の信認を得ていた経済政策担当のシムシェキ前副首相は政権を去った。エルドアン氏の娘婿で、後任に当たるアルバイラク財務相が中銀の独立性尊重や財政規律の重視を打ち出すよう市場は期待しているが、これまでのところ投資家や企業との対話に努める姿勢はみられない。

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