2018年8月20日(月)

欧州で「反移民」に勢い、スウェーデン極右政党人気
9月9日総選挙で第1党うかがう EUに新たな火種

ヨーロッパ
2018/8/8 17:51
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 【ブリュッセル=森本学】移民や難民の受け入れに寛容とされてきたスウェーデンで議会選挙が1カ月後に迫り、反移民を掲げる極右のスウェーデン民主党が第1党をうかがう勢いをみせている。欧州の国政選挙で極右政党が第1党になれば第2次大戦後で初めて。主要政党は極右との連立に否定的なため極右政権が誕生するハードルは高いが、2019年の欧州議会選挙を控え、移民排斥や反イスラムを掲げる政党がさらに勢いづく兆しが出てきた。

「反移民」で支持を広げる極右政党・スウェーデン民主党のオーケソン党首(2014年9月、ストックホルム)=ロイター

 「スウェーデン・ショック」。9月9日に投開票の議会選(定数349議席)を巡って、欧州メディアでこんな言葉が広がり始めている。理由は世論調査での極右・民主党の躍進ぶりだ。

 7月以降の世論調査では、20%超の支持率を安定的に確保し、スウェーデン議会で最多の113議席(3割超)を保有する与党の社民党と首位を争う。調査によっては、民主党が社民党を上回って第1党となるケースも出てきた。

 現実になれば、社民党は1917年から約100年にわたって堅持してきた第1党の座を初めて失う。移民や難民の受け入れにも寛容な福祉の国というイメージが根強かったスウェーデンにとって歴史的な転換点となる。

 ネオナチの系譜を受け継ぐ民主党は1988年に結成。反移民に加えて反EUをアピールし、EUからの離脱を問う国民投票も求める。2010年に初めてスウェーデン議会で議席を獲得。14年の議会選では12.9%の議席を獲得して第3党に躍り出て、主要政党の仲間入りを果たしていた。

 民主党伸長の背景にあるのが難民・移民の受け入れ急増だ。スウェーデンはもともと難民受け入れに寛容で、欧州難民危機が発生した15年には中東などから約16万3000人の難民申請者が押し寄せた。人口約1000万のうち、外国出身者や両親がともに外国出身という人の比率は17年に約24%に達した。

 「移民の大量流入が莫大なコストと社会のひずみをもたらしている」。民主党を率いる39歳のオーケソン党首は選挙向けの動画で訴える。難民や移民の受け入れや社会統合よりも、両親ともに自国生まれのスウェーデン人の社会保障や雇用確保に国の財源を充てるべきだなどと主張して支持を伸ばしてきた。

 テロの脅威が極右伸長につながっている面もある。スウェーデンでは17年4月に、トラックが群衆に突っ込むテロ事件が発生。実行犯のウズベキスタン出身の男は難民申請が却下されて国外退去を命じられたが、姿をくらましていた過去が明らかになった。テロの原因を寛容な難民政策に結びつけて政権批判するのも民主党の手法だ。

 与党・社民党を率いるロベーン首相も民主党の台頭を受け、難民申請基準や国境管理の厳格化へカジを切ってきた。それでも反移民を支持する勢いは止まらない。今回の選挙では、民主党から枝分かれし、難民・移民の母国への帰還を求める新党「スウェーデンのための選択肢(AfS)」も参戦する。

 議会選で民主党が第1党の座を獲得しても、政権を担うのは容易ではない。他の主要政党は軒並み極右との連携に否定的なためだ。

 それでも難民受け入れに積極的だったスウェーデンで、極右政党が第1党になれば、オーストリアやイタリアで連立政権の参加が相次ぐ欧州の極右・ポピュリズム政党をさらに勢いづける公算が大きい。19年5月に控える欧州議会選挙での反移民や反EUを掲げる勢力の台頭につながる可能性もある。

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