2018年8月22日(水)

IT大手 巨額投資に動き出す(The Economist)

ネット・IT
The Economist
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2018/8/10 5:50
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 IT(情報技術)産業の歴史は、製品の変遷に沿って語られることが多い。1990年代はパソコンの時代。次にインターネットおよび関連サービスの時代が到来し、続いてモバイルの時代が訪れた。そして今、AI(人工知能)の時代が近づきつつある。

 しかし、別の視点で変化を見ることもできる。IT業界は、利益をため込む時代から再投資の時代へと切り替わりつつある、という視点だ。

 投資額の大ざっぱな指標として土地の面積を見てみよう。市場時価総額の大きな米国のIT企業上位5社が10年前に保有していた土地は全部合わせて、米ニューヨークにあるセントラルパークの1.5倍程度の広さだった。ところが、これらの企業が不動産に湯水のようにカネを注ぎ込んでいる今、5社が利用する土地は10年前の10倍、約55平方キロに及ぶ。これはマンハッタン全体の面積に近い。IT企業は、桁外れの規模で利益を投資に回し始めているのだ。

 5社が利用する土地の面積の5分の2は米アマゾン・ドット・コムが占める。これは、マンハッタンのグランド・セントラル駅より南側全体に相当する。

米IT大手5社が利用する土地は10年前の10倍と、ほぼマンハッタン全体の面積にまで拡大した=ロイター

米IT大手5社が利用する土地は10年前の10倍と、ほぼマンハッタン全体の面積にまで拡大した=ロイター

 同社のジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)は、20年前の98年にはまるで異なるメッセージを発信していた。同社のビジネスモデルは「キャッシュを重視、資本を効率的に」だと投資家に向けて語っていたのだ。

 中国のIT企業も最近まで大きな資産を抱えない傾向があった。アリババ集団の2017年末の市場時価総額は、中国の製造業上位700社の合計にほぼ等しかったが、保有する資産はその700社の12%にすぎなかった。

■アマゾン、世界4位の投資額

 投資家は、小さなバランスシートから巨額の利益を生み出し続けるIT企業の力を好んできた。だが、経済学者はそこに警戒の目を向けた。米経済学者のローレンス・サマーズ氏は2年前に、IT業界が投資全体を冷え込ませるかもしれないと危惧していた。デジタル化により産業に破壊的革新をもたらした企業は、自己投資をほとんどしない──このことが、既存の企業の投資意欲をそぐと予想したのだ。同氏はこの点を、「長期停滞」と呼ぶ幅広い問題状況の一部と見なしていた。

 しかし、この2年の間、IT企業がもはや投資を手控えていないことが明らかになった。アマゾンの17年の設備投資は250億ドルに達した(リースを含む)。この投資額は世界第4位に当たり、17万2000kmのパイプラインを抱えるロシアの巨大エネルギー企業、ガスプロムさえもやや上回る。

 米国の経済統計は企業会計よりも投資を幅広く捉え、研究開発費やコンテンツ制作費も投資と見なす。この定義に従えば、米国と中国のIT大手上位10社の総投資額は過去5年で3倍に増え、1600億ドル(約17兆8000億円)に達する。これに、企業を買収したり、中小企業の株式を購入したりするのに要した金額を加えると、総額は2150億ドル(約23兆9000億円)にまで膨らむ。

 この投資の5分の2は無形資産に、3分の1が有形の施設に投じられている。残りが買収などだ。全体として、現在のIT企業の再投資性向は、一般の上場企業に近づいていると言える。

 こうした傾向は、巨大企業に限ったものではない。中国のスマートフォンメーカー、小米(シャオミ)は過去3年で20億ドルの投資を行った。ITベンチャーと見なされることもある米オフィスレンタルのウィワークは17年、有形資産に10億ドル投資している。

 米国の企業全体(上場、非上場合わせて)の投資額のうち、IT企業が5分の1を占めると推定される。投資額が伸びた分に限れば、少なくとも半分がIT企業によるものだ。

■ドアノブのデザイン決定に1年半

 IT業界におけるこの投資ブームには4つの要因がある。

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