2018年8月18日(土)

米IT大手「陰謀論者」の投稿削除 規約違反で
発信者とトランプ氏の近さ、問題複雑に

ネット・IT
北米
2018/8/7 15:00
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 【シリコンバレー=佐藤浩実】アップルやフェイスブックなど米IT(情報技術)大手が相次いで右派の「陰謀論者」の投稿を削除している。コンテンツが暴力や差別を助長するなどヘイトスピーチ(憎悪表現)の規約に違反するというのが理由だ。偽ニュースに厳格に対処した格好だが、「表現の自由」との兼ね合いや、発信者がトランプ米大統領に近い人物とされることで、大きな議論となりそうだ。

アレックス・ジョーンズ氏が運営するネットメディアのコンテンツは、規約違反を理由に一斉に削除の対象となった(ロイター)

 削除の対象となったのは、テキサス州を本拠にインターネットメディア「インフォウォーズ」を運営するアレックス・ジョーンズ氏が発信してきたコンテンツだ。

 2001年9月11日の同時多発テロは米政府の「内部者による犯行」といった陰謀論などを発信しており、移民を犯罪者扱いするなどフェイク(偽)ニュースも多い。最近では、5年前の小学校の銃乱射事件が「でっち上げ」だと事実無根の主張を展開。子どもを亡くした両親が続ける銃所有制限の活動を妨害し、訴訟になっている。

 独自の主張に賛意を示す人々もおり、インフォウォーズは数百万人規模の視聴者がいるとされる。ジョーンズ氏自身もツイッターで80万人を超すフォロワーを抱える。

 アップルは6日までにポッドキャストの一覧からジョーンズ氏のコンテンツの大半を外した。フェイスブックも同氏のビデオ投稿のうち4本を削除したと公表した。グーグル傘下のユーチューブも既に同氏の投稿ビデオを閲覧できなくしている。音楽配信のスポティファイや写真共有サービスのピンタレストも同様の対応をとっている。

 アップルは日本経済新聞の取材に「我々はヘイトスピーチを許容せず、全ユーザーに安全な環境を提供するため、開発者やクリエーターに明確な指針を設けている」と説明。フェイスブックも「規約に反する内容を繰り返し投稿した」ことを理由に挙げる。

 各社の対応には、不正投稿や偽情報に断固とした措置をとらなければ、強い批判を浴びるとの危機感がある。フェイスブックはロシアによる米大統領選挙への関与の「舞台」となり、米議会の反発を招いた。

 ただ今回の一件が注目を集めるのは、ジョーンズ氏とトランプ氏の関係が近いという特殊要因も大きい。トランプ氏は大統領選のさなかにジョーンズ氏の番組に出演し、同氏から絶賛された。

 インフォウォーズ側は削除に反発する。6日にはジョーンズ氏が自身の番組で「左派のテック企業がネット上の言論の自由を殺そうとしている」と主張。関係者はツイッターへの投稿で「インフォウォーズは(大統領選で)トランプ氏の当選に重要な役割を担った」とし、今回の削除は「中間選挙を前に、民主党を助けようという協調した動きだ」と批判している。

 無数の情報が行き来する巨大な基盤である「プラットフォーマー」であるIT大手にとって、政治的な中立性をどう確保するかは大きな課題だ。言論の自由に反する「検閲」だとの批判もつきまとう。今回は逆に政治的な偏向を非難される状況にもなり、問題の難しさを際立たせている。

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