2018年11月21日(水)

海外金融市場で影響力維持する日本(The Economist)

The Economist
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2018/8/8 2:00
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時は1979年夏、“ハリー・“ラビット"・アングストロームは、米ペンシルベニア州ブリュワーで自動車の販売代理店を経営している。米著名作家ジョン・アップダイク氏の「ウサギ」シリーズ4部作の主人公であり、ごくありふれた男だ。

日銀の金融緩和策も手伝って今や日本は純対外資産が3兆ドルとGDPの6割に達し、海外の債券や株式市場では存在感を発揮している=AP

日銀の金融緩和策も手伝って今や日本は純対外資産が3兆ドルとGDPの6割に達し、海外の債券や株式市場では存在感を発揮している=AP

街には、衰退の気配が広がっている。地元の織物工場はいくつも閉鎖された。ガソリン価格が高騰する中、ラビットの販売店のバックヤードには、顧客から下取りしたデトロイト産の車があふれかえっている。そんな車を欲しがる人などいない。それでもラビットに懸念する様子はみられない。というのも、彼が経営するのはトヨタ自動車の販売店だからだ。彼が販売する車は燃費が最も良く、整備費も最も安くてすむ。これからは米国産より日本車が売れる。従ってトヨタの車を買うということは、今後価値が下落していくドルを、強い通貨になっていく円に替えるのと同じことだ、と彼はお客さんに売り込んだ。

4部作の3作目である「金持になったウサギ」は、日本が経済大国として浮上してきたことで、米国が初めて不安を感じはじめた時代を背景としている。日本は当時、繊維や家電、鉄鋼など様々な産業で米国から首位の座を奪い、さらに、自動車産業においても米国を追い抜こうという勢いだった。

当時に比べれば、現在の日本の経済的な地位はかなり低下している。かつては経済規模で世界2位だったが、その座は中国に明け渡した。日本は当時、貿易を巡って米政権のタカ派の主な標的だったが、今やその標的は中国だ。それでも日本は、ある点において今なお影響力を維持している。

日銀は7月31日、金融政策をほぼ現状のまま継続すると決定した。だが金融政策決定会合の前に、大幅な方針転換が発表されるかもしれないという噂が流れ、世界の債券市場にやや緊張が走った。不安が広まるのは当然だった。日銀が突然、進路変更をしようものなら、その影響は日本だけにとどまらないからだ。

その理由の一つは、日本が何十年も貯蓄余剰を積み上げてきたのに伴い、世界の資産市場に及ぼす影響力を拡大し続けてきたことにある。日本の純対外資産、つまり日本が国外に保有する資産から外国に対する負債を差し引いた額は2017年、約3兆ドル(約335兆円)に達した。これは日本の国内総生産(GDP)の60%に相当する(グラフ参照)。

しかし、これは極端な金融緩和政策の結果でもある。日銀は、なかなかインフレ率が上がらない事態を打破しようと、あらゆる特別な措置を講じてきた。短期金利をマイナス0.1%とし、年間80兆円をめどに長期国債を購入する方針を掲げることで、長期金利(10年物国債の利回り)を0%程度に維持している。加えて、国内の上場投資信託(ETF)も年間、約6兆円購入している。

こうした措置は、かつては型破りとされたが、今はすっかりおなじみのものとなっている。おかげで、日本の銀行や保険各社、そして個人投資家たちは、国内より高い利回りが期待できる外国の株式や債券を購入するようになった。しかも、日本の投資家は、さらにその株式や債券の購入を拡大するために、対外短期債務を大幅に増大させているのだ。

おかげで日本の対外資産は、10年にはGDP比111%だったのが、17年には同185%にまで増加している(グラフ参照)。こうした資本流出の影響を如実に示しているのが為替市場だ。つまり、現在の円安を招いている。

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