2018年10月20日(土)

米のイラン制裁、7日に一部復活 まず車・鉄鋼

中東・アフリカ
2018/8/5 18:55 (2018/8/5 22:28更新)
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【ドバイ=岐部秀光】トランプ米政権が5月に表明したイラン核合意からの離脱に伴い、第1弾の制裁猶予が6日に期限切れとなり、7日から一部復活する。違反すればイランに進出する日本や欧州などの企業も米国の制裁対象となるため、撤退や事業の見直しを余儀なくされている。通貨リアルは対ドルで最安値をつけ、経済の苦境は深刻になっている。

「イラン経済は非常に悪くなる」。トランプ米大統領はツイッターに5日投稿し、制裁再開がイラン経済に大きな打撃となると主張。「私と会うか会わないかは彼ら次第だ」と余裕をみせた。

第1弾となる自動車や鉄鋼などの制裁猶予が6日に期限切れとなり、11月には石油や金融の猶予期間も終わる。その後もイランと取引を続けた企業は、制裁金を科されたり米市場でのビジネスを禁じられたりする可能性がある。

制裁第1弾の対象の自動車では、イラン市場はイランホドロとサイパの国内2大メーカーが中心となって急成長し、昨年の生産は140万台とロシアやトルコを上回り英国に迫る。ルノーやグループPSAなど欧州勢が新規投資を凍結する可能性がある。制裁の影響が少ない中国の自動車メーカーが空白を埋めようとしている。

鉄鋼は2017年4月~18年3月に過去最高の900万トンを輸出した。欧州向けの輸出が落ち込んでも、イランは中国などアジアへの輸出増で代替したい考え。

米はイランへの航空機の輸出審査も厳しくする。国営航空会社イラン航空は5日、フランスとイタリアの合弁航空機メーカーATRに発注した航空機20機の一部として、5機の引き渡しを受けたと発表した。制裁復活前の駆け込みで一部を納入したとみられるが、全機の納入は見通せない。

さらに影響が大きいのは11月に復活する第2弾だ。イラン中央銀行や民間銀行との決済が全面禁止となる。すでに日本や欧州の銀行は取引を大幅に縮小しており、通貨の価値が暴落し物価高を招いた。イランの企業は投資計画を立てられない。

イラン経済の要である原油への制裁も影響が大きい。原油・石油製品はイランの輸出全体の70%、歳入の30%を占めるとみられる。デンマークの海運会社マースクはイラン産原油の引き受けを中止する。仏石油メジャーのトタルは、制裁対象から外れない限りイランでの天然ガス開発計画から撤退する方針だ。

米は11月4日までにイラン産原油を禁輸するよう各国に要請した。日本の原油輸入でイランの割合は全体の5%超を占める。

しかし米とイランの対立で石油価格は上がっており、イランへの打撃は縮小しそうだ。イランの石油輸出は米制裁に伴い2割減るとの予想があるが、年初からの石油価格の上昇率はすでに2割を超えた。イランの石油販売収入は変わらないことになる。

原油高や核合意に伴う欧州からの投資増加でイラン経済は過去5年で改善した。1人当たり国内総生産(GDP)は18年に2万1241ドルとなり、生活水準は上がった。

制裁で借り入れが難しかったこともあり、対外債務は国内総生産の1.7%にあたる74億ドル(約8200億円)と小さい。外貨準備高は約1400億ドルと十分な規模だ。これまでも制裁を科されてきたイラン指導部は、今回も耐えられると計算しているようだ。

ただ制裁再開を控え、イランの通貨安に拍車がかかっている。7月29日に1ドル=11万2000リアルと前日比で約15%下落し、最安値をつけた。

通貨下落で物価が上がり、庶民の生活は苦しさを増す。「独裁者に死を」。イランでは今月に入り、反政府デモが連日、発生している。イスファハン、シラーズなどの都市のデモは数千人規模と小さいが、一部はロウハニ大統領や最高指導者ハメネイ師に矛先を向ける。イラン革命防衛隊は2日、国際的な石油の輸送経路であるペルシャ湾やホルムズ海峡で大規模な軍事演習を始め、米の制裁再開をけん制した。

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