2019年9月23日(月)

迷走続きのクールジャパン機構、新ファンドで仕切り直し

2018/8/3 20:00
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海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)は3日、NTTグループや電通などと組み、総額100億円規模の新ファンドを立ち上げると正式に発表した。米ネットフリックスなどの動画配信サービスを通じて海外向けコンテンツの流通拡大を目指す。成長著しい海外配信サービスの力を借りることで、迷走続きだった政府のクールジャパン政策の立て直しを図る。

クールジャパン機構は、NTTぷらら(東京・豊島)や吉本興業と電通の共同出資会社であるYDクリエイション(東京・新宿)などと共同で、ファンド運営会社のジャパンコンテンツファクトリーを設立した。ネットフリックスや米アマゾン・ドット・コムなど大手動画配信サービスを経由してコンテンツの海外流通を促す。

ネットフリックスやアマゾンは動画配信サービスを通して、日本の動画コンテンツの海外配信を強化している。ネットフリックスは2016年にベストセラー小説をドラマ化した「火花」の配信を皮切りに、お笑い、恋愛リアリティー、アニメなどを190カ国で配信している。アマゾンも4月から日本で制作した独自番組を200以上の国と地域で配信している。

特に海外で人気の高いのがアニメだ。ネットフリックスは「大人が見ても楽しめる品質の高い作品を生み出せる才能と制作会社が集まっている」(国内のアニメ担当幹部)として、東京に大人向けアニメ制作の専属部隊を置いている。

ネットフリックスの世界の利用者は1億3000万人、アマゾンの動画サービスを利用できるプライム会員も1億人を超える。独自コンテンツ制作への投資額も高まっており、ネットフリックスは17年に60億ドルだったコンテンツ制作費を18年には75億~80億ドルに拡大する見込みだ。急激な伸びを見せる海外の配信サービスの勢いに便乗する形で、クールジャパン機構はコンテンツ流通の拡大を目指す考えだ。

動画配信大手は独自コンテンツを集めるため、制作会社と企画中のコンテンツについて契約するが、ライセンス費を支払うのは作品完成後のケースが多いとされる。「中小の制作会社にとっては完成までの制作資金の調達が難しく、受注を断念するケースもあった」(クールジャパン機構)という。総額100億円規模の新ファンドで作品を完成させる資金を制作会社に融資する。

日本のアニメや食などを輸出するという政府の戦略のもと、クールジャパン機構は13年に発足。アジアでの百貨店事業、外食の中東輸出、テレビ番組輸出など日本文化の発信のために多くの案件に出資してきた。

しかし、17年3月末時点の会計検査院の調べでは、クールジャパン機構は約310億円の投融資によって約44億円の損失が生じていた。こうした状況を受け、6月に初代社長で松屋出身の太田伸之氏は任期途中で退任。ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)前最高経営責任者(CEO)の北川直樹氏が社長に就任している。

迷走続きだったクールジャパン機構は、今回のファンドでコンテンツへの注力という方向性にひとまずの筋道をつけた。機構は仮想現実(VR)や拡張現実(AR)を使った映像コンテンツへの投資も視野に入れるという。海外配信サービスの力を借りるだけでなく、日本独自の技術やサービスを育成する役割にも期待は高まっていきそうだ。

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