2019年6月18日(火)

ドラマ生む起伏 滑らかに 六甲国際ゴルフ倶楽部の芝管理(もっと関西)
ここに技あり

コラム(地域)
2018/8/6 11:30
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6月に女子プロゴルフの「宮里藍サントリーレディース」が開催された六甲国際ゴルフ倶楽部(神戸市北区)。案内された西コースの13番ホールは、今年の大会でも勝負を決めるプレーオフの舞台になった最終18番ホールだ。

毎日のグリーン整備は朝6時半から。散水後、芝刈り機で丁寧に芝を刈り込む。通常の芝の高さは3.8ミリ。大会中は2.8ミリまで刈る。グリーン面を指でなぞると、芝のくずとともに直径1ミリ未満の細かな砂の粒が指先につく。

実はこの砂が六甲国際では特に重要な意味を持つ。「起伏のあるグリーンがうちの特徴。傾斜のある箇所の芝を短く刈る際、丁寧に作業しないと面が削られて凸凹になる」とコース管理部次長の黒田尚樹さん(44)。芝の葉の間に砂を入れ床を高くした上で、砂から出ている葉の部分だけを少しずつカット。このコースで磨いてきた独特の技だ。

プレーが始まる前の早朝、毎日グリーンの芝を刈る

プレーが始まる前の早朝、毎日グリーンの芝を刈る

黒田さんは六甲国際で25年目のグリーンキーパー。微生物や植物の種子が混入しないように焼いて加工したグリーン用の砂は、京都産の山砂を取り寄せ、自分の手で触って選ぶ。「安定した面をつくりやすい、粘りけの少ない感触の砂にこだわっている」

プロの大会で要求される硬く、速いグリーンは、芝を極限まで短く刈り、ローラーで固め、滑らかな起伏に仕上げる。六甲国際のベント芝(西洋芝の一種)にとって2.8ミリという刈り高は「究極の仕上げ」であり、芝が健康に育っていることが前提になる。

芝にとって重要な儀式が3月末から4月初めに行うコアリングだ。グリーン面に2~3センチ間隔で太く、深い穴(直径12ミリ、深さ10センチ)を開け、新しい砂や肥料を入れる。グリーンは土を掘り返して耕せないが、放置すると根が過密になり、酸素の供給も滞る。コアリングは芝の成長を促す刺激であり、大会3週間前にも少し小さめの穴で行う。

大会がある6月は雨が多い。コアリングは透水性の改善にも役立ち、降雨時に水が浮きにくいグリーンに仕上がる。ただ、表面は雨で緩むため「本番前に慌ててローラーで固めることも」(黒田さん)。六甲地域特有の岩盤と粘土という地質は水はけが悪く、コース上に排水パイプを入れる工事も冬に行っている。

2006年から六甲国際で開催し、今年から宮里藍さんの名を冠する同大会は、若手の飛躍の舞台になってきた。「テレビで見る人にもゴルフの魅力を伝えること」も黒田さんらの目標だ。バンカーの縁の芝を整え、松林の根元を茶色の松葉で敷き詰め、芝との境の曲線を美しく見せる技は「米マスターズのオーガスタを意識している」という。

文 大阪・運動担当 影井幹夫

写真 松浦弘昌

カメラマンひとこと 早朝、ゴルフ場から聞こえたのは、クラブのスイング音ではなく、芝刈り機の軽快なエンジン音だった。作業員がグリーン上を何度も往復している。刈り込んだ芝くずを触らせてもらうと、粉のようにさらさらと指からこぼれた。ミリ単位の繊細な技術を感じる。まかれた水を吸い、夏の陽光を浴びたグリーンはまるでじゅうたんのようだった。

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