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フランスのW杯優勝で感じた「超越する力」
スポーツコメンテーター フローラン・ダバディ

(2/2ページ)
2018/8/5 6:30
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スポーツとドーピングの関係は古い。冷戦時代は東西陣営が国の威信をかけて五輪での薬物使用に手を染めた。冷戦が終結し、資本の論理でスポーツの巨大ビジネス化が進んだその後、ドーピングは選手個人が巨額の富を得るための地下ビジネスへと変貌を遂げた。1990年代のサッカーのイタリア1部リーグ(セリエA)では多くのスター選手が違反薬物を使っていたし、米大リーグも例外ではない。国際オリンピック委員会(IOC)や国際サッカー連盟(FIFA)、国際テニス連盟(ITF)などは万全のドーピング対策を施していると自負しているが、違反のニュースが絶えないことからも、根絶からはほど遠い。

この問題には日本の選手も割を食っている。日本人が大リーグでなかなか活躍できず、ツール・ド・フランスで走れず、サッカーのビッグクラブに定着できず、テニスツアーで故障が絶えないのも、薬物の力を借りた"ミュータント"と戦わなければならないのが理由の一つだと僕は考えている。確証もないまま選手個人を名指しするのは避けなければならないが、撲滅に向けた努力は続けられなくてはならないし、日本も国際的な研究への参加や資金提供を惜しむべきではないと思う。

日常生活を忘れる気晴らし?

民放のスポーツ番組に出ていたころ、ドーピング問題を取り上げようとすると、「暗い話題は避けてほしい」と止められた。ニュース番組を見ていても、深刻な顔をしたキャスターたちがスポーツコーナーになった途端、笑顔になる。一般紙がドーピング問題を取り上げるフランスではスポーツが暗部も含めた社会の一部と捉えられているのに対し、日本では「日常生活を忘れるための気晴らし」とみなされているのが根本的な違いだろう。

しかし、好むと好まざるとにかかわらず、スポーツが社会を反映するのは避けられない。フランスのW杯優勝は社会不安の一因とみられた移民を含めた市民に一体感をもたらした。日常を忘れるのではなく、超越する。スポーツにはそんな力があることも、忘れずにいたい。

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