2019年1月18日(金)

マスク氏も腰低く テスラ、黒字化へ正念場

2018/8/2 13:25
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【シリコンバレー=白石武志】米テスラの苦闘が続いている。1日発表した2018年4~6月期決算は、前の期に比べ赤字幅が拡大した。難航していた新型電気自動車(EV)「モデル3」の生産は軌道に乗りつつあるものの、販売店の整備士までかき集めるなど急場しのぎの生産体制には危うさも漂う。生産を安定させ下期には黒字へと転換させるシナリオにはまだいくつもの壁が立ちはだかる。

1日のアナリスト説明会で、マスク氏は前回の発言について謝罪した=AP

1日のアナリスト説明会で、マスク氏は前回の発言について謝罪した=AP

「前回の電話会見で無礼があったことをおわびしたい」。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は1日に開いた電話会見で、丁寧な言い回しでこう謝罪した。相手は、5月の説明会で「質問内容が退屈だ」として回答を拒んだアナリストたちだ。5月の説明会後、マスク氏の態度がアナリストなどから酷評され、テスラ株は急落した。

勝ち気で知られ、物議を醸す発言を楽しんでいたフシさえあったマスク氏の神妙な姿勢は、テスラの経営が転換点にさしかかっていることの現れだ。業績改善が視野に入り始めたタイミングで、資本市場を敵に回したくないという本音をのぞかせた。

■7~9月期の黒字化が目標

18年4~6月期決算は最終損益が7億1753万ドル(約800億円)の赤字(前年同期は3億3639万ドルの赤字)と四半期ベースで過去最大の赤字幅となった。ただ、約42万件の予約を抱えるモデル3の納車が進み始めたことで売上高は43%増の40億223万ドルと市場予想を上回り、1日の時間外取引でテスラ株は一時、終値に比べ10%超上昇した。

テスラは8月下旬までにモデル3の生産台数をさらに2割増やして週6000台とする計画だ。既存の生産ラインの効率を高めることで、18年の設備投資額は17年に比べ26%少ない25億ドル未満に抑えるという。売上高を伸ばしつつ費用増を避けることで、目標としていた7~9月期の黒字化が視野に入りつつある。

テスラは7月に米国外初となる新工場を中国・上海に建設すると発表したばかり。1日の電話会見でマスク氏は年内に欧州でも新工場の立地選定を終える意向を示した。グローバルな生産体制の実現には、米国生産するモデル3が安定して収益を稼ぎ出すことが不可欠になっている。

■テントの中に生産ライン

「我々は真の自動車会社になった」。6月末に週産5000台の目標を達成した際、マスク氏は従業員宛ての電子メールで感慨深げに語った。17年7月のモデル3の納車式典で「これから生産地獄に向かおうとしている」と発言してから約1年。自ら工場に寝泊まりしてボトルネックの解消を指揮し、目標を突破した。

しかし肝心のモデル3の生産現場は綱渡りが続いている。

テスラの工場では急きょ設置したテントの中で車両を生産している=ロイター

テスラの工場では急きょ設置したテントの中で車両を生産している=ロイター

カリフォルニア州フリーモントにある完成車工場は文字通り「つぎはぎだらけ」の状態だ。このほど稼働させた3本目の車両組み立てラインは既存の建屋に収まりきらず、屋外に張り出す大型テントを急きょ設置した。

一部の工程ではロボットによる生産の完全自動化を一時的に断念し、人海戦術によって生産台数を上積みしている。生産ラインには販売店の整備士らを工場に動員したとみられ、顧客サービス部門へのしわ寄せが懸念されている。

■元従業員との訴訟合戦も

マスク氏は過去数年の成長の過程で生じた職務権限の重複などを解消するため、6月中旬に全従業員の9%を削減すると表明した。その直後には待遇に不満を持ったとされる従業員による情報漏洩が発覚。従業員側は内部告発を妨げられたと主張して訴訟合戦に突入するなど、社内の混乱も目立つようになっている。

株式市場はマスク氏の独善的な振る舞いにもリスクを感じ取り始めている。一部の株主はテスラの工場で深刻な労働災害が相次いでいると指摘。マスク氏に権限が集中する事態を容認しているとして、友人や実弟らが名を連ねる取締役会のガバナンス(企業統治)改革を求めている。

モデル3の量産化への投資が膨らんだことで、18年6月末の現金同等物は約22億ドルと3月末に比べ約4億ドル減った。7月には一部の取引先に支払い済みの代金の一部を返還するよう求めたと米メディアで報じられており、部品を供給するサプライヤーの間では資金繰りを不安視する声も聞かれる。

マスク氏は1日に公表した投資家への手紙の中で「15年かけて低価格で収益性の高いEVを量産するという最初の目標を達成した」と宣言した。ただ、実態はなお内憂外患に見舞われている。企業活動を支える従業員や取引先などステークホルダーへの目配りを怠れば、今後の成長の落とし穴となる恐れもある。

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