2019年2月22日(金)

大動脈プラークの自然破綻は日常的に起きている?

2018/8/2 18:00
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日経メディカル Online

血管内視鏡で観察した大動脈。画像中央に黄色プラークが確認でき、上部にはプラークが破綻して湧出したコレステロール結晶が光を反射して白く輝いている。(提供:日本血管映像化研究機構)

血管内視鏡で観察した大動脈。画像中央に黄色プラークが確認でき、上部にはプラークが破綻して湧出したコレステロール結晶が光を反射して白く輝いている。(提供:日本血管映像化研究機構)

冠動脈疾患がある、または疑われる324例に対し、血流維持型血管内視鏡検査を施行し大動脈内部を観察したところ、8割の患者に自然破綻した大動脈プラークが見つかった。NPO法人日本血管映像化研究機構理事長の児玉和久氏(大阪警察病院名誉院長)らのグループが、米国心臓病学会誌(JACC)2018年6月25日号に報告した。

■300人超、大動脈内部を血管内視鏡で観察

これまで大動脈プラーク破綻は、血管造影やコンピューター断層撮影装置(CT)、血管内超音波(IVUS)など従来の検査法では観察が難しく、大動脈壁病理標本のゴースト(欠損)像としてしか認識されていなかった。しかもその頻度は5%未満とされ、カテーテル操作など医原性のものが主体で、自然破綻はほとんどないと考えられていた。児玉氏らは300を超える患者の大動脈内部を血管内視鏡で観察し、大動脈プラーク自然破綻の発生頻度や性状、大きさを世界で初めて明らかにした。

使用した血管内視鏡は、内視鏡カテーテルを外筒(誘導用カテーテル)で覆い、カテーテルと外筒の隙間から疎血液(生理食塩水やデキストラン溶液など)を流すことで部分的に視野を確保して血管内を観察する検査法。米国でも、一時的に阻血することで視野を確保し血管内を観察する血流遮断型血管内視鏡が開発され、1990年に米食品医薬品局(FDA)の承認を受けたが、阻血による死亡例が複数報告されたことから93年に承認が取り消された。

児玉氏らは93年に血流を遮断しない血管内視鏡(血流維持型血管内視鏡)の開発に成功。その後改良を進め、2014年には2つの外筒から同時に疎血液を流すDual Infusion法を開発し、冠動脈よりも大量の血液が流れる大動脈の観察を可能にした。これまで血流維持型血管内視鏡により行われた冠動脈検査約3万9000例、大動脈検査約1200例において、有害事象は1例も報告されていないという。

今回研究の対象としたのは、15年10月1日から17年9月30日までに大阪暁明館病院(大阪市此花区)で冠動脈疾患が疑われ、冠血管造影・待機的冠動脈インターベンションと血管内視鏡を施行した連続324症例(平均71±10歳、男性67%)。そのうち、262人(80.9%)で自然破綻した大動脈プラークが見つかった。破綻プラークからは、キラキラと光を反射するコレステロール結晶などが飛散、浮遊している様子が観察された。

96人からプラーク内容物のサンプル482個を採取でき、そのうち237個(49.1%)にアテローム性物質が、244個(50.6%)にフィブリンが、111個(23.0%)にマクロファージが、127個(26.3%)に石灰化が観察された。サンプルとして得られたプラーク断片の大きさの中間値は、254μm×148μmだった。大動脈プラークは上行大動脈から総腸骨動脈まで分布していたが、腎動脈付近や腹部大動脈に多く認められた。アテローム性物質に含まれるコレステロール結晶には、数層から数十層に折り重なって流血中に遊離・飛散する「重層タイプ」と、1枚単位で遊離・飛散する「単層タイプ」が認められた。

破綻した大動脈プラークの部位別発生頻度とタイプ (出典:J Am Coll Cardiol. 2018 :71:2893-902.)

破綻した大動脈プラークの部位別発生頻度とタイプ (出典:J Am Coll Cardiol. 2018 :71:2893-902.)

この結果から、筆頭著者である大阪暁明館病院の小松誠氏は「大動脈プラークの自然破綻は日常的に起こっており、そのサイズはこれまで考えられていたものより小さいことが分かった」と結論付けている。

■認知症やサルコペニア、慢性腎臓病の原因にも関与?

また、得られた単層コレステロール結晶の大きさは40μm×30μm、大動脈壁病理標本のゴースト像のサイズは86μm×30μmであった。このことから、そのゴースト像は単層タイプ、重層タイプのコレステロール結晶を様々な方向から断面として切った結果であり、コレステロール結晶は病理標本作成中に溶け出してしまうため、標本ではゴースト(針状の裂隙)像として観察されると児玉氏はみている。

動脈硬化病変のプラークが破綻しコレステロール結晶が末梢の細い動脈を詰まらせる病態はコレステロール塞栓症(cholesterol crystal embolization:CCE)として知られているが、血管内カテーテル操作など医原性に起こる、比較的まれな疾患と考えられてきた。しかし今回の報告により、高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙歴など複数の動脈硬化危険因子を有する人々に、大動脈プラークの自然破綻が日常的に起きている可能性があり、大動脈解離や破裂性胸・腹部大動脈瘤など急性大動脈症候群の発症・増悪に密接に関わっていると考えられる。

さらに児玉氏は、「この遊離コレステロール結晶は静脈血ではほとんど観察されないことから、脳、腎、眼、消化器、皮膚、筋肉などの末梢組織での沈着や毛細血管の塞栓に関わっている可能性がある。これまで一部原因不明とされてきた認知症やサルコペニア、慢性腎臓病などにおける虚血性細胞死の起因物質となっているという仮説も成り立つ」として、今後も研究を進めていきたいとしている。

(日経メディカル 大滝隆行)

[日経メディカル Online 2018年7月31日掲載]

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