2019年8月23日(金)

身近にある薬のもと
(WAVE)成田宏紀氏

2018/8/3 6:30
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

盛夏の候、読者諸氏におかれてはお子様の夏休みの宿題にお付き合いされる方もいらっしゃるのではないだろうか。今回は夏休み特別企画として、自由研究に使えそうな身近な薬を紹介したい。

2000年エヌ・アイ・エフベンチャーズ(現・大和企業投資)に入社し、11年投資第一部副部長兼VC投資第四課長。14年5月、DCIパートナーズ社長就任。

2000年エヌ・アイ・エフベンチャーズ(現・大和企業投資)に入社し、11年投資第一部副部長兼VC投資第四課長。14年5月、DCIパートナーズ社長就任。

医薬品というと研究所で作っている遠い世界のイメージをお持ちかもしれないが、ちょっと公園にでも出かければ身近に触れることができる。

初級編は生薬である。乾燥したミカンの皮やセミの抜け殻、石こうなどがある。胃薬、じんましん薬、止しゃ薬などの漢方として使われているものもある。

ちょっと調べていただければ、身近にたくさんの生薬が存在していることに気づいてもらえるだろう。採集したり、効能について調べてみたりしてはいかがだろうか。既に先人が色々試して後世に伝えているので、自分で新発見を目指すような自由研究はおすすめしない。

中級編は現代の低分子医薬である。低分子医薬も身近な物質を出発点に医薬品となっているものが多い。簡単に発見できるのが、柳とアオカビである。人々は19世紀、天然由来の薬を加工することに成功した。その代表例が柳の抽出物から作られた鎮痛薬のアスピリンである。

20世紀中ごろ、それまで人類を苦しめ続けた感染症に対抗できる大発見が起きた。アオカビから発見された抗生物質のペニシリンである。出発点となった物質を探してみるとともに、これらの発見の歴史や抽出・加工方法、現代の製造方法を調べてみてはどうだろうか。

ちなみに、決して抽出して「飲んだり」「飲ませたり」してはいけない。ヒトで試すことは臨床試験で行われるべきことであり、医薬品の開発行為だ。

どうしても薬として開発したいのならば、審査機関である医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査が必要である。PMDAに審査をしてもらうには、「GMP」と呼ばれる厳しい製造基準で製造した抽出物と、高級車が買える程度のお金を用意しなければならない。

紹介した物質は既に薬になっているので、後発医薬品(ジェネリック医薬品)として開発が始まるかもしれない。後発医薬品なので、動物試験のデータの提出は免除されるはずだ。問題なのは審査に時間を要することだ。審査の間に夏休みが終わってしまうため、自由研究としてはあまりおすすめしない。

上級編は最先端のバイオ医薬品だ。今まで紹介した中で実は最も身近なところにある。我々の体内である。

体内では、外敵から身を守るために無数の抗体と呼ばれる物質が巡回している。我々の体はあらゆる外敵に対応できるように1億種類以上もの抗体を作り出せる。これらは現在、最先端のバイオ医薬品として応用されている。

少し難しいが、抗体の構造や機能、その多様性の仕組みを調べてみてはどうだろうか。生命の神秘を感じることができるかもしれない。

ちなみに、抗体を見たいからといってわざわざ痛い思いをして血を抜いてはいけない。小さすぎて顕微鏡でも見えないので、おすすめできない。何より、けがなく楽しい思い出を作るのが夏休みだ。

[日経産業新聞 2018年8月2日付]

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