2018年9月20日(木)

グーグルも触手 米中「ちょい乗り」覇権争い

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2018/8/6 2:00
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 自転車やスクーターなど小型の移動手段「マイクロモビリティー」のシェアリングサービスで、覇権争いが激しさを増している。主役は米中のスタートアップ。ここ2カ月でユニコーン企業が3社も誕生するなど、市場拡大を見込んだリスクマネーに過熱感も出ている。資金の出し手としてベンチャーキャピタル(VC)だけでなく、米ウーバーテクノロジーズや米グーグルが触手を伸ばしている。

 自宅や会社など目的地から最寄り駅など公共交通機関までの「ラストワンマイル」の交通手段を担うマイクロモビリティーで、企業価値が10億ドル(1200億円)を超えるユニコーンが相次ぎ誕生している。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

 投資家はシェア自転車・スクーター市場を制すると見込んだ企業に出資し、各社の価値を急速につり上げている。各社が競合する様子はライドシェア大手の米ウーバーや中国の滴滴出行のかつての姿をほうふつとさせる。

 マイクロモビリティー分野では、中国のシェア自転車ofo(オッフォ)と哈羅単車(ハローバイク)、米シェアスクーターのバードライズとライムのユニコーン4社が急速に台頭しつつある。オッフォ以外はユニコーンの地位を獲得してまだ2カ月足らずだ。

シェア自転車・スクーター企業の資金調達額が急増(2014年~18年7月11日の実績)

シェア自転車・スクーター企業の資金調達額が急増(2014年~18年7月11日の実績)

■リスクマネー急増

北京の歩道に並ぶ「オッフォ」と「モバイク」のシェア自転車

北京の歩道に並ぶ「オッフォ」と「モバイク」のシェア自転車

 この分野の資金調達額が世界的に急増したのはごく最近だ。投資家の間で、ライドシェアと並ぶ既存市場への破壊力があるとの認識が出てきたことを示している。シェア自転車やシェアスクーターのプラットフォームは、都市交通で手薄なファースト&ラスト・ワンマイルの移動手段として理想的といえる。

 このため、投資家は市場で地位を確立している中国企業に資金を投じている。中国のシェア自転車最大手オッフォは、この分野のユニコーン第1号だ。足元の企業価値は推定30億ドル(約3360億円)で、資金調達額は計21億5000万ドル(借り入れによる資金調達を除くと18億7000万ドル)に上る。

スタートアップの資金調達の呼び方について  一般的に最初期の「シード」から始まり、追加の初期調達「シリーズA」から事業規模や成長期待などに応じてB、C、D、Eへと進む。また、それぞれの資金調達をラウンドと呼ぶ

 オッフォは黒字化をなかなか果たせずにいるが、中国のアリババ集団と傘下のアント・フィナンシャルを中心とした投資家は資金をつぎ込み続けている。オッフォはフランス、日本、米国で展開している海外事業をさらに拡充するため、3月にシリーズEの追加ラウンドを実施して5億8600万ドルを調達した。

 ハローバイクは6月にアントから3億2100万ドルの出資を受け、ユニコーンの仲間入りを果たしたばかり。同社は中国のシェア自転車でオッフォ、摩拝単車(モバイク)に次ぐ3番手につける。

■ウーバーアプリでも利用可能に

 市場が比較的新しい米国では、いち早く規模を広げて市場を制する可能性を示した企業に資金が集中している。

米バードライズのスクーター(7月23日、カリフォルニア州サンタモニカ)=ロイター

米バードライズのスクーター(7月23日、カリフォルニア州サンタモニカ)=ロイター

 バードはスクーターのシェアリングに特化した初の企業で、全米の各都市で地場勢として優位に立っている。これは米配車サービスを支配したウーバーと同様の戦略だ。

 バードの米国での最大の競合であるライムは、3億3500万ドルの増資でユニコーンの仲間入りを果たしたばかり。ウーバーはこのラウンドに参加したのに加え、ライムとの提携を発表。ライムのサービスをウーバーのモバイルアプリに対応させる方針を明らかにした。ウーバーの配車アプリは米国で圧倒的なダウンロード件数を誇るため、この動きはバードにとって深刻な脅威となりそうだ。

 バードとライムの最近の資金調達の主な目的は、新たな都市への事業拡大だ。

 事業拡大には、車両を買い足すなど多額の設備投資が必要になる。もっとも、スクーターは今やファースト&ラスト・ワンマイルの交通手段として有望な市場であるため、投資家の意欲は依然として高い。

シェア自転車・スクーターのユニコーンへの投資状況(13年~18年7月5日の実績)
(注)ライムが7月9日に実施した資金調達(シリーズC・調達額3億3500万ドル)は、このグラフには反映していない。米GVが主導し、米アンドリーセン・ホロウィッツ、米アトミコ、米コーチュー・マネジメント、米フィデリティ・インベストメンツ、米フィフス・ウォール・ベンチャーズ、シンガポール政府系投資会社GIC、米インスティテューショナル・ベンチャー・パートナーズ(IVP)、ウーバーが参加した

シェア自転車・スクーターのユニコーンへの投資状況(13年~18年7月5日の実績)
(注)ライムが7月9日に実施した資金調達(シリーズC・調達額3億3500万ドル)は、このグラフには反映していない。米GVが主導し、米アンドリーセン・ホロウィッツ、米アトミコ、米コーチュー・マネジメント、米フィデリティ・インベストメンツ、米フィフス・ウォール・ベンチャーズ、シンガポール政府系投資会社GIC、米インスティテューショナル・ベンチャー・パートナーズ(IVP)、ウーバーが参加した

■米中のシェア「自転車・スクーター」スタートアップへの主な投資実績

◎コーチュー・マネジメント、ロシア系のDSTグローバル(DSTG)、米GGVキャピタルは2017年9月、ライムのシリーズB(調達額5000万ドル)に共同出資。

◎アント、コーチュー、DSTGはオッフォに投資。コーチューとDSTGは17年3月のシリーズD(4億5000万ドル)に参加し、コーチューは16年10月のシリーズC(1億3000万ドル)にも加わった。アントは今年3月のシリーズEの追加ラウンド(5億8600万ドル)に出資した。

◎アントとGGVは17年12月のハローバイクのシリーズDに参加。アントはシリーズD―1(3億5000万ドル)、GGVはD―2(1億5300万ドル)にそれぞれ出資した。

 米国では、大手VCが乗り捨て式のスクーターシェアリングを手がけるユニコーンに出資している。アンドリーセンはライムの常連投資家で、シリーズA(1200万ドル)、シリーズB(5000万ドル)、シリーズB―2(7000万ドル)に参加した。

 バードもアクセル・パートナーズやインデックス・ベンチャーズ、セコイア・キャピタルなど多くの大手VCの関心を集めている。3社はいずれもバードのシリーズC(3億ドル)に参加。セコイアはこのラウンドに加え、数週間後に予定されている新たなラウンド(調達予定額1億5000万ドル)も率いる見通しだ。

 IT(情報技術)大手もマイクロモビリティーへの投資に乗り出している。中国ではアリババ集団がオッフォに多額の資金を投じており、17年7月のシリーズE(7億ドル)を主導したのに加え、18年3月の追加ラウンド(5億8600万ドル)にも参加した。米国では、グーグルがライムに投資。ライムの最新ラウンド(3億3500万ドル)はGVが主導し、グーグルの親会社アルファベットも参加した。

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