黒田日銀総裁、長期金利「倍程度の変動念頭」

2018/7/31 15:59
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日銀は31日、現状の金融緩和の「枠組み強化」を決めた。長期金利の誘導目標はゼロ%程度に据え置いたが「当分の間、現在の極めて低い金利水準を維持する」と約束した。ただ、緩和余地が限られる中で繰り出された苦肉の策という面は否めない。物価目標の達成は2021年度以降になる見込みで、厳しい戦いが続く。

新たに導入した「フォワードガイダンス」は将来も金融緩和を長く続けることを示す手法だ。黒田東彦総裁は会合後の記者会見で「物価安定目標の実現のコミットメント(約束)を強める」(黒田東彦総裁)と強調した。これまで2%物価の実現まで資金供給量の拡大を続けることを約束していたが、これを金利にまで広げた。

市場では事前に「日銀は長期金利の上昇を容認する」との観測があったが、これもけん制した形だ。政策の発表後、長期金利は0.09%から0%台前半へと低下した。

こうした判断の起点となったのは物価の鈍化だ。企業業績や雇用の環境がいいにもかかわらず、春先以降の物価は鈍化。日銀が31日に物価見通しを下方修正し、20年度すら1.6%とした。基本シナリオですら強力な緩和はあと3年続くことになり、「物価目標への姿勢が揺らいでいないことを示さなくてはならなかった」(幹部)

だが、長期金利はすでにゼロ%程度で追加緩和余地は乏しかった。いまの緩和をより長く続けるということを示すほかに選択肢は少なかった。

一方で緩和の長期化による副作用も積もっている。異次元緩和はすでに5年がたち、新たな物価見通しなら計8年以上になる。超低金利が続けば銀行収益は圧迫され、国債市場の機能も低下する。フォワードガイダンスも「当分の間」と明確に期限は示さなかったのもこうした背景がある。

金融調節面で副作用への配慮も施した。長期金利の誘導もゼロ%程度としつつも、上下0.1%程度の幅で調整していたものを「倍程度(0.2%程度)の変動を念頭に置いている」(黒田東彦総裁)とした。「極めて低い金利を維持する」約束ではあるが一時的な振れは容認することで、市場機能を保つ狙いがある。

年6兆円の上場投資信託(ETF)購入も、個別株の過度な価格変動を和らげるため、幅広い銘柄を対象とする東証株価指数(TOPIX)連動型を増やすことにした。

今回の措置で緩和の持続性は一応高まったが、あくまで対症療法という面が色濃く、2%物価目標に向けては決め手を欠く。「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では「長期にわたる低成長やデフレの経験などから、賃金・物価があがりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残っている」としており、物価目標の達成はさらに遠のく可能性もあり、黒田体制の計10年間での目標達成にも黄信号がともりつつある。

(後藤達也)

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