2018年11月13日(火)

世界各地で酷暑、高まる危険(The Economist)

The Economist
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2018/8/1 2:00
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フィンランド北部のラップランドの町ソダンキュラは、北極圏との境目のすぐ北に位置し、年間の平均気温は0度に満たない。そのため住民は、かろうじて夏に近い天気を少しだけ楽しめる7月を心待ちにする。ただ、今年ほどの暑さは求めていなかったはずだ。18日に気温は32.1度を記録、これは7月の平均を12度も上回り、1908年の観測開始以降、最も高い気温だった。うだるような暑さに見舞われているのはソダンキュラだけではない。

今夏は猛暑でシベリアの森林からアテネ郊外、米西海岸などで山火事が相次いでいる(写真は7月29日、カリフォルニア州北部で起きた森林火災=ロイター)

今夏は猛暑でシベリアの森林からアテネ郊外、米西海岸などで山火事が相次いでいる(写真は7月29日、カリフォルニア州北部で起きた森林火災=ロイター)

ギリシャのアテネ近郊では、山火事で少なくとも80人が死亡した。スウェーデンでも例年にない暑さと日照りで森林火災が相次いでいる。英国とオランダは、降水量が最も少なかった夏に数えられる76年より雨が少ない。シベリアでは約800平方キロもの森林が燃えている。日本は今年の酷暑を災害と発表した。ロサンゼルスの中心街では7日夜、最低気温が26.1度となり、史上最も暑い7月の夜となった。それでもオマーンのクリヤットより涼しい。同市ではその数日前、1日の最低気温が42.6度だった。

■欧州では2003年の熱波で7万人が死亡

猛暑は、特に途上国で様々な問題を引き起こす。作物は被害を受け、食物は腐り、労働者の生産性が落ちる。気温の上昇は凶悪犯罪や暴動につながると示す研究もある。暑さが死ももたらしえる。欧州では2003年夏、7万人以上が猛暑が直接の原因で命を落としたとされる。

03年夏の熱波は当時、1000年に1度の出来事として認識されていた。オランダ王立気象研究所のヘルト・ヤン・ファン・オルデンボルフ氏によると、今夏は今のところ、気温の面では欧州北部を除けば特に異常ではないという。例えば、オランダは数年に1度は酷暑に見舞われる。ただ、100年前なら20年に1度だったかもしれない。英気象庁のピーター・ストット氏率いるチームが数年前に算出したところによると、03年のような暑さは、12年までには1000年に1度ではなく127年に1度起きる状況に変わったという。

地球温暖化がもたらす結果として、気温上昇ほど分かりやすい現象はない。今の地球は、大気に温暖化ガスが吐き出されるようになった産業革命の前に比べ、気温が1度ほど上昇しているという。この気温上昇をもたらすいわゆる熱力学的効果だけが問題なら、並外れて暑いと感じる今の気温がいずれ普通になり、異常な寒さはさらに珍しくなるだけだ。だが気候とは複雑なものであり、問題はそれだけにとどまらない。

まず、より寒冷な北極と南極の方が、より暖かい低緯度地域よりも急速に温暖化が進むため、気象パターンが変化する可能性がある。両者の気温差が縮まると、ジェット気流(上空10キロあたりの高さで吹く偏西風)の速度が落ちる。そうなると、ジェット気流が運ぶ気圧や前線が長く滞留してしまう。これは熱力学的効果を相殺して、予想以上に低い気温をもたらすこともあるが、どちらかといえば涼しくなるより、暑くなることの方が多い。

■人為的活動が異常気象発生の一因

ただ、気温がいつどれほど上昇するかについては、気候学者の間で激しい議論となっている。特定の熱波や干ばつ、洪水を人為的汚染が原因と断定するのは難しい。異常気象は起きる。これまで観測された史上最高気温は、カリフォルニア州デスバレーの56.7度だ。ただ、それは1913年7月10日のことで、大気中の二酸化炭素の濃度は現在よりずっと低かった。

高度な統計学を駆使し、人間活動の影響を排除した気候の変化をコンピューターでシミュレーションし、実際の気候の変化と比べれば、特定の天候が発生する確率が人間によって高められたかどうかを推測することができる。初めてそれを試みたのがストット氏らによる2004年の研究で、それによると03年の欧州の酷暑は、人間活動により発生確率が2倍になったという。以来こうした研究は急増し、「イベント・アトリビューション」と呼ばれるようになった。気候変動関連の情報を載せるサイト「カーボン・ブリーフ」が1年前に調べたところ、この分野の論文は138本に上り、144件の天気事象を分析していた。そして、48回の熱波の41回に人間活動が影響したという。

その後も、多くの研究が進んでいる。オルデンボルフ氏とオックスフォード大学のフリーデリケ・オットー氏が運営するサイト「ワールド・ウェザー・アトリビューション」にはほぼ毎月、新たな研究が載る。過去の天候分析だけでなく、未来を予測する研究も多い。目立つのは、15年のパリ協定で掲げた目標に各国がどれだけ真剣に取り組むかで、異常気象の発生確率が今後どう変わるかというものだ。同協定は、産業革命前からの気温上昇幅を2度以内(できれば1.5度未満)に抑えるのが目標だ。

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