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地域枠義務放棄の研修医9人 初めて実態明らかに

日経メディカル Online

厚生労働省は2018年4月から初期臨床研修を開始した医師について、地域枠で入学し臨床研修中に従事要件があるにもかかわらず、当該府県での研修を行わずに他地域の病院で現在研修している医師が9人いることを7月26日明らかにした。臨床研修中に従事要件のある地域枠は764人で、国試不合格者1人を含めると1.3%が地域枠を離脱したことになる。これまでも地域枠の研修医が、本来研修すべき場所ではない地域で勤務しているケースがあることが問題となっていたが、実態が明らかになったのは初めて。

雇用した病院へのペナルティー新設へ

7月26日に行われた厚労省の医道審議会医師分科会医師臨床研修部会では、2017年度に域外の地域枠の学生とマッチングした9病院に事情をヒアリングした。各病院は、(1)貸与金を返却して地域枠から外れていた、(2)自治体や本人も含めて制度を誤解していた、(3)1次で当該県でマッチングしなかった――などをマッチングした理由として挙げた。

また、厚労省があらかじめ地域枠を設定していた自治体からのヒアリングでは、「償還の意志があれば、法的に阻止することができず、認めざるを得ない」「在学中または初期臨床研修修了後に離脱する意志を表示している者がいる」などの意見が出された。研修医本人についても、「9人中7人は自己都合で地域枠を離脱している。2人についても特別、どうしても地域枠を離脱しなければいけない理由ではなかったと考えている」(厚労省担当者)という。

これに対し、委員からは、「貸与金を返したことで、地域枠から離脱することは道義的に許されるのか」「お金を返せばいい、となると制度が壊れる」という意見が続出。地域枠で通常とは異なる入試の合格基準を設けていたり、推薦入試で入学したりしていることから、入学させた大学の責任を問う声もあった。他地域の地域枠卒業生を受け入れた病院に対しても、「地域医療を守る、と各病院のウェブサイトでうたっているが、自分の地域しか考えていない」(和歌山県立医科大学名誉教授の岡村吉隆氏)など、厳しい意見が出された。

厚労省は、17年7月に医事課長通知を発出。地域枠の学生にはマッチングの際にその旨を申し出ることを求めるとともに、病院側にも従事要件と研修プログラムに齟齬(そご)がある場合は希望順位登録を行わないことを求めていた。

にもかかわらず、地域枠を自己都合で離脱する医学生が出たことを受けて、厚労省では改めて病院側に地域枠の要件から外れた学生をマッチングしないよう周知したり、マッチング時に地域枠で入学しているかどうかをシステム上分かるようにしたりする方針を示した。また、19年度のマッチングをめどに、地域枠の学生が他地域で研修できないような仕組みを導入するとともに、理由なく域外の地域枠の学生とマッチングした病院に対して、補助金の減額や研修医の採用人数の減員などのペナルティーを導入する予定だ。

(日経メディカル 山崎大作)

[日経メディカル Online 2018年7月30日掲載]

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