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真夏の東京五輪 事故防止へサポートは万全か
編集委員 北川和徳

2018/8/1 6:30
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連日の猛暑が少し緩んだと思ったら、前代未聞のコースをたどる台風が襲来した。2年後の今ごろは東京五輪の真っ最中だ。コントロールできない自然を気に病んでも仕方がないのだが、こんな気象条件で大会を迎えることになったら、と考えると怖くなる。

これほどスポーツにふさわしくない時期の大会となるのは、国際オリンピック委員会(IOC)が夏季五輪を7月15日から8月31日の間に開催するように求めているためだ。その理由が、巨額の放映権料を支払う米テレビ局に配慮して米国のプロスポーツが盛り上がる時期を避けていると聞くと、「アスリートファーストはどこへ」と憤りたくもなる。

もっとも、アスリートも五輪のビジネス価値が高まることで恩恵を受ける。自らのパフォーマンスが世界の多くの人々に注目されることを彼らも願っているから、真夏の開催を一概に否定はできない。ただ、過酷な条件となるマラソンや競歩、トライアスロン、自転車のロードレースなどは、開催国の責務として万全の備えをして実施してほしい。

ロサンゼルス五輪女子マラソンで、よろめきながらゴールするアンデルセン選手=共同

ロサンゼルス五輪女子マラソンで、よろめきながらゴールするアンデルセン選手=共同

酷暑が招いた事故で思い出すのは、1995年夏のユニバーシアード福岡大会だ。女子マラソンでトップを独走していた鯉川なつえ選手が残り3キロでもうろうとなり、しばらく迷走した末に倒れた。

ゴールとなる福岡ドーム(当時)の大型スクリーンで見ていたのだが、突然蛇行を始め、ふらふらとコースを外れて別のところまで走った後、今度は戻ってきて逆走、正しい方向に走り出そうとして倒れた。それでも何度か立ち上がろうとした。一緒に見ていた関係者が「早く止めろ」と焦って叫んでいた。大変な事態が起きたと思った。84年ロサンゼルス五輪の女子マラソンのガブリエル・アンデルセン選手(スイス)より衝撃的な姿だった。

その数年後、母校の順天堂大で研究者、指導者となった鯉川さんから直接、当時の状況を聞いたことがある。原因は脱水と熱中症。倒れた直後の体温は40度を超え、脈も弱くて危険な状態だった。「スタッフがすぐに体全体を冷やしてくれたので大事にいたらなかったと思う」。病院で点滴を2リットル以上したという。

当日の気温は30度を超えていなかったが、湿度はスタート時で86%。途中で激しい雨が降ってからまた日が差すような天候で湿度は90%を超えた。

32キロ以降の彼女の記憶はほとんどない。「汗が体にまとわりついて乾いたタオルで拭き取りたくて仕方なかった。沿道の人からもらったら失格かなと思ったことだけは覚えています」。湿度の高さで汗が蒸発できずに体を覆い、体温の異常な上昇を招いたと考えられる。

あれから20年以上が過ぎた。今では研究も進み、似たような状況なら給水所で早めにスポンジを手にして体を拭きながら走ることなどをランナーは知っている。通気性や速乾性の高いウエアの開発も進んだ。十分な対策をして地元大会に臨む日本選手に関して深刻な事故の心配はないだろう。

だが、高温多湿の日本の気候を身をもって知らない海外のランナーはどうだろう。「暑いのは日本選手に有利」ではなく、事故防止のために、日本の暑さ対策の情報提供も検討すべきではないか。そんなことも考える今夏の暑さである。

(2020年東京五輪開幕まであと723日)

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