預けた施設で母に何が 介護施設5人死傷から1年、岐阜

2018/7/30 12:30
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岐阜県高山市の介護老人保健施設「それいゆ」で高齢入所者5人が相次いで死傷した問題は、最初の1人が亡くなってから31日で1年となる。「数日前まで元気だった母の様子が明らかにおかしかった」。3人目の死者となった女性の遺族は振り返る。死因は事故と主張する施設側。県警は暴行を受けた可能性を視野に捜査を続けるが結論は出ていない。「施設で何が起きたのか」。遺族は真相解明を求めている。

岐阜県高山市の介護老人保健施設「それいゆ」(28日)=共同

入所していた中江幸子さん(当時87)は、高山市の山間部で長男、茂広さん(67)夫婦と3人暮らし。牛舎や畑を持つ家に嫁ぎ、熱心に働いた。キュウリや大根など野菜の栽培が得意だった。

2013年に脳梗塞を発症した後も、動かせる右腕で家庭菜園の手入れを楽しんでいたが、16年12月に再び脳梗塞を患い、自分で動くことが困難に。認知症の症状も出ていた。茂広さん夫婦も高齢で仕事と介護の両立が難しく同月、それいゆに預けた。

入所後も元気に会話をしていた幸子さんに異変があったのは昨年8月12日午後2時ごろ。夫婦で見舞うと、ベッド上で目を見開き放心状態で、首回りにはあざのような多数の赤い斑点があった。

茂広さんは急いで職員を呼んだが、幸子さんは呼び掛けに応じない。施設によると、2人が帰宅後の午後4時40分ごろ、顔面蒼白(そうはく)になっているのを職員が発見。救急搬送され、翌日亡くなった。

県警の司法解剖の結果、死因は折れたあばら骨が肺に刺さり血液がたまる外傷性血気胸。施設は「介助時に強く抱えるなどした事故」との見解を示すが、「あばら骨や胸骨がそんなことで折れるのか」と茂広さん。要介護5の幸子さんは、移動に常に職員2人の介助が必要だった。

施設2階の認知症専門フロアでは、幸子さんの死亡前後の約半月間に他に2人が死亡し2人が負傷した。捜査本部を設置した県警は「外部からの侵入は考えにくい」とするが、有力な目撃証言や客観証拠は乏しく、捜査は難航。

一周忌の準備を進めながら茂広さんがつぶやいた。「真相が分からないままだと、ばあさんも浮かばれんよ」

岐阜の介護施設5人死傷とは 岐阜県高山市の介護老人保健施設「それいゆ」で昨年7月末からの約半月間に、門谷富雄さん(当時80)、石本きん子さん(同93)、中江幸子さん(同87)の男女3人が死亡、90代の女性2人があばら骨を折るなどのけがで入院した。5人は認知症専門フロアに入居していた。短期間に死傷者が集中したことを重視し、県警は捜査本部を設置して捜査。施設側は死傷の原因について、1人を病死、4人を「事故だった」と主張している。
〔共同〕
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