独政府、中国企業による買収却下へ 規制強化を初適用
【フランクフルト=深尾幸生】ドイツ政府が中国企業による独の精密機械メーカー、ライフェルト・メタル・スピニングの買収を却下する見通しになった。2017年に独が外国企業による買収規制を強化して以来、初めてのケース。この買収について審査していた独経済省が「安全保障を脅かす」と判断したという。欧米諸国では最近、中国側による企業買収や投資で軍事や航空宇宙関連の技術が流出する可能性に懸念が強まっていた。

買収の却下は、8月1日にメルケル内閣が正式に決める見通しだ。独経済誌ウィルトシャフトウォッヘが報じた。買収についてライフェルト社は日本経済新聞に「コメントできない」と答えた。
買収対象になっているライフェルト社は独西部アーレンに本社を置く。従業員は約200人で、金属加工のための精密機械を製造する。同社の技術は米航空宇宙局(NASA)のロケットにも使われている。ドイツ通信によると、買収を計画しているのは煙台市台海集団。原子力関連の事業を手がけているようだ。
独政府は17年7月、外国企業による国内企業の買収に関する規制を強化した。その前も防衛関連や情報セキュリティーなど限られた分野の企業買収について議決権の25%以上を取得する場合は経済省の審査が必要だった。改正で欧州連合(EU)と欧州自由貿易連合(EFTA)以外の地域の企業による重要なインフラ産業などへの出資も規制されることになった。
背景には、16年の中国美的集団による工作機械大手、独クーカ買収があったとみられる。安全保障や技術流出を懸念する議論が起こったからだ。
足元では議決権比率25%以上という規制の対象が十分かどうかという議論もある。
独経済省は27日、政府系のドイツ復興金融公庫にドイツの送電会社50ヘルツの株式の20%を取得するよう指示したと発表した。オーストラリアの投資会社が売りに出したこの20%分の株式を中国の国有送電会社、中国国家電網(SGCC)が買収しようとしていたからだ。2月に浙江吉利控股集団の李書福董事長が自動車大手ダイムラーの株式の10%弱を得た際も取得方法が批判された。