ディズニー、ネットフリックスと全面対決
21世紀フォックスの事業買収決定

2018/7/28 18:01
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【ニューヨーク=平野麻理子】ウォルト・ディズニーが自前の動画配信を軸にした「コンテンツ王国」に近づく。27日、21世紀フォックスのコンテンツ資産買収を両社の臨時株主総会で正式に決めた。フォックスが持つ「アバター」などの人気映画や、テレビ番組の権利がディズニーに移る。子供向けアニメから大人向けまで独自コンテンツをそろえ、動画配信で先行するネットフリックスを追う。

フォックスが持つ「アバター」などの人気映画や、テレビ番組の権利がディズニーに移る=AP

フォックスが持つ「アバター」などの人気映画や、テレビ番組の権利がディズニーに移る=AP

ディズニーはフォックスのコンテンツ事業の大半を713億ドル(約8兆円)で買収する。ディズニーによる大型買収は、2012年に「スター・ウォーズ」シリーズの「ルーカスフィルム」を取得して以来となる。

05年にディズニーの最高経営責任者(CEO)に就いたボブ・アイガー氏にとって、フォックス買収は思い描いてきた「最強コンテンツ王国」完成に向けた最後のピースになる可能性が高い。再三延長されてきた同氏の任期は、現在の契約では19年7月までの予定だ。

ディズニーの強みはブランド力と子供向けを中心としたアニメや映画作品だ。同氏の就任以降、ディズニーは「ピクサー・アニメーション・スタジオ」「マーベル・エンターテインメント」「ルーカスフィルム」といった有力スタジオを次々と傘下に収めてきた。

ピクサーの「トイ・ストーリー」やルーカスフィルムの「スター・ウォーズ」シリーズはいまやディズニーの稼ぎ頭に育った。映画の興行収入だけでなく、グッズ販売やテーマパークの集客などで幅広く収益に貢献する存在だ。ここに「ザ・シンプソンズ」「アバター」などフォックスの作品群が加わる。

一部の映画ファンの間では、フォックスに一部権利が残っていたマーベルシリーズの「デッドプール」や「Xメン」がディズニーに合流することに期待の声が上がる。

子供から大人まで幅広い層が楽しめる動画やキャラクターのコンテンツを手中に収めたディズニーが向かうのは、群雄割拠の動画配信の世界だ。従来はCATVやネット動画配信会社に番組を提供してきたが、自前のネット配信に軸足を移す。

動画配信最大手のネットフリックスへの作品提供をやめ、19年から自前の動画配信サービスを始める。アマゾン・ドット・コムやアップルなども動画配信に注力する中で、ディズニーは独自コンテンツの力で真っ向勝負を挑む。

米映画情報サイトのボックス・オフィス・モジョによると、今年の米興行収入ランキングは現時点までのトップ10作品中5つをディズニー、1つをフォックスの作品が占める。売上ベースでは、米国全体の興行収入の4~5割をディズニーが支配することになる。業界では、動画配信の台頭ですでに弱体化した映画館への価格交渉力が強くなりすぎることを懸念する声も上がっている。

フォックスのコンテンツ資産は同業のコムキャストも取得を目指し、一時ディズニーとの買収合戦に発展した。コムキャストは19日にフォックスの買収を断念したが、フォックスが39%の株式を保有する英放送局スカイの獲得は諦めていない。ディズニーが今回買収した資産にはスカイ株が含まれており、ディズニーとコムキャストの戦いはまだ続いている。

コムキャストが一時フォックス買収に参戦したことで、ディズニーによる買収総額は当初の524億ドルから713億ドルまで膨らんだ。

フォックスはもともとスカイを完全子会社化するため、残りのスカイ株61%の取得を目指していた。今回フォックスのスカイ株39%がディズニーの手に渡ることになり、引き続きスカイの子会社化を狙うかはディズニーに委ねられる。

現時点ではコムキャストの買収提案額が上回っており、ディズニーが対抗するには提案額を引き上げる必要がある。一方でフォックスから受け取った39%の株もコムキャストに売り、一連の買収にかかる負担を減らす選択肢も浮かぶ。

GBHインサイツのダニエル・アイブス氏は「欧州で優れたコンテンツを持つスカイは、ディズニーもコムキャストも欲しい企業だ。両社とも簡単に買収を諦めるとは思えず、金額はまだ上がるだろう」とみている。

ディズニーのフォックス買収手続きの完了には各国・地域の規制当局からの許可が必要となる。米司法省はすでに同買収計画を承認しているが、米半導体大手クアルコムが中国の独占禁止法当局から承認を得られなかったように、今後は米国外での承認獲得も課題となる。また713億ドルという買収額はディズニーの年間売上高を上回り財務負担の懸念もある。

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