2018年8月21日(火)

長引く対立、にじむ疲弊 普天間移設、先行き見えず

九州・沖縄
社会
2018/7/27 18:45
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 沖縄県の翁長雄志知事が27日、米軍普天間基地(同県宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事を巡り、埋め立て承認の撤回を表明した。国は処分取り消しを求めて提訴する構えで、国と県が改めて法廷で争うことになる。「正直、またか」。出口の見えない対立に、地元住民には疲弊の色がにじむ。

沖縄県名護市辺野古の沿岸部で進む米軍普天間基地移設に向けた護岸工事(27日午後)=共同

沖縄県名護市辺野古の沿岸部で進む米軍普天間基地移設に向けた護岸工事(27日午後)=共同

 「工事は傍若無人。政府の姿勢はとうてい容認できない」「辺野古に新基地は造らせない」。藍色のかりゆしウエアに薄いグレーの帽子でこの日の記者会見に臨んだ翁長氏。ややしわがれた声で、撤回表明に至った経緯や理由を説明した。

 淡々とした語り口だったが、工事を進める政府にどんな思惑があると思うかを問われると、身ぶり手ぶりを交えて熱がこもる場面も。「沖縄は振興策をもらって基地を預かっていればいいというのは、沖縄の政治家として容認できない」

 4月に膵臓(すいぞう)がんの手術を受けた。外反母趾(ぼし)になり、歩くのがきついという。ゆっくりとした足取りで会見場をあとにした。

 「即時撤回」を求めてきた移設反対派は知事の決断を歓迎する。那覇市の70代女性は「辺野古の海は絶対に埋めさせない」と力を込める。米軍キャンプ・シュワブ前での抗議活動に4年前から参加。「土砂を入れてしまったら海は濁り、元に戻せなくなってしまう。国は環境のことを考えて」と強調した。

 一方、地元住民の表情には疲弊の色が濃くにじむ。「正直、またかという思いだ」。辺野古区に住む60代男性はうんざりした様子。同区は経済振興や安全面の徹底などを条件に移設受け入れを容認しているが、国と県の対立に翻弄され続けてきた。

 男性は「最高裁で国が勝訴しているし、県は(再度の法廷闘争に)勝てる見込みがあるのだろうか。もう工事は粛々と進めてもらいたい」と静かに語った。

 普天間基地近くの宜野湾市真志喜地区に住む自営業、前森一夫さん(50)は「国と県の対立が続けば宜野湾の危険性も続くことになる」と心配する。昨年は米軍ヘリの窓が地元小学校に落下する事故も起きた。「撤回するなら知事は宜野湾市民にしっかり説明してほしい」と求めた。

 早稲田大法学研究科の岡田正則教授(行政法)は、土砂投入で移設工事は本格段階に入るとして「環境への影響はこれまでとは比べものにならない。地元住民への心理的影響も大きくなるだろう」と指摘している。

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