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大谷嘉兵衛氏 23歳の大勝負、60歳の大奮闘
市場経済研究所代表 鍋島高明

2018/8/11 5:30
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 横浜開港以来、茶貿易は生糸に次ぐわが国輸出商品のおおどころであった。日本の緑茶は外国人の好みに合い輸出額は年々増えていた。有数の茶どころ伊勢で生まれた大谷嘉兵衛は幼時から茶業に従事していたが、製茶輸出の将来性を確信した嘉兵衛は横浜に出る時機をうかがっていた。文久2年、開港から3年目の19歳の時、横浜に出る。親戚の伊勢屋小倉藤兵衛方に奉公する。その働きぶりが気に入られて養子となるが、養父との仲がうまくいかず、スミス・ベーカー商会にくら替え、にわかに商才を発揮する。

 「慶応3年秋、従来行わなかった関西茶買い付けの全責任を任され、豪快な現金買いで、宇治、大和茶を買いも買ったり、実に70万斤(約420トン)、金額にして26万8000両を使い切って意気揚々と横浜に帰った。その翌日、鳥羽伏見の戦いが起こったというから、実に間一髪の離れ技を演じたわけである。ときに嘉兵衛はまだ23歳の若さであった」(稲葉博編著「かながわの100人」)

 この時、店主は嘉兵衛に巨額の報奨金を与えた。嘉兵衛が横浜商人の巨頭にのし上がった根っこはここにあり、果断にして大胆な商才は今に語り継がれる。それにしても嘉兵衛は幸運の星の下に生まれたことは確かなようである。

 輸出人気をいいことに、明治3、4年ころから茶に粗製乱造の弊害が表れ始める。嘉兵衛は当時、スミス・ベーカー商会の支配人であると同時に大谷商店も開業していたが、横浜製茶改良会社を設けて、輸出製茶の検査を実施した。これが日本茶の信用回復に役立った。

 以来、製茶のほか、海産物、生糸など取り扱い商品を拡充する一方、金融業にも乗り出す。そして大谷は横浜政財界のリーダーとして頭角を現していく。

 「実業界では明治14年第七十四国立銀行取締役に就任、のちその頭取に推され、翌年には横浜貯蓄銀行取締役に就任、次いでやはり頭取になった。同22年には横浜貿易商総代、25年横浜貿易商組合総理、同26年横浜蚕糸外四品取引所理事、28年横浜商業会議所の創立に参加、同30年から36年までと、同42年から大正10年までその会頭を務めた」(横浜市立大経済研究所編「横浜経済・文化事典」)

 17年間にわたって横浜商人の顔ともいうべき、商業会議所会頭を務めたところに大谷の圧倒的な指導力、存在感を知ることができる。大谷の業績の中で見落とせないのは、米国が日本茶に課した関税撤廃に全力を上げたことである。明治31年アメリカ、スペイン間で起こった米西戦争の影響で米国が輸入茶に関税を課したため、同国に入る日本茶の価格が2倍にハネ上がり、製茶業は壊滅的な打撃を受けた。茶畑を焼き払う悲劇も起きた。

 「米西戦争の結果、米国は茶に苛重なる輸入関税を課するや、君は全国同業者の衆望を容れて32年秋渡米し、時の大統領マッキンレー氏をはじめ朝野の有力者を歴訪し極力撤廃を促して、翌年帰朝後、さらに敏活なる運動を継続し、35年に至り、ついに廃税の目的を達するを得たり」(森田忠吉編「横浜成功名誉鑑」)

 大谷の熱誠が米側を動かし、明治36年1月1日撤廃された。会議所月報に載った大谷の関税撤廃への決意は、その目的が果たされなければ、生きて帰らぬという悲壮な覚悟が記されているそうだ。

 「大谷は晩年になってもあの握手した“大統領の大きな手”を思い出し、その時の光景と身の引き締まる気持ちが忘れられないと語り、そのことを誇りとしていた」(横浜商工会議所百年史編集室編「横浜経済物語」)=敬称略

信条
・性温厚篤実、福徳円満の君士人
・声望隆々内外に高く、文明的実業家の典型
・横浜の誇りとすべき徳望家(横浜成功名誉鑑)
・製茶の直輸出の道を開いた
・茶の大谷から世界の大谷へ(横浜経済物語)

( おおたに かへえ 1845-1933 )
 弘化元年三重県出身、文久2年、19歳の春横浜に出る。親戚の伊勢屋小倉藤兵衛が製茶の売込商(輸出商)を開業していたので、ここで働くが、ゆえあって辞めスミス・ベーカー商会に移る。明治元年独立、同14年第七十四国立銀行取締役、同22年横浜貿易商総代となる。同17年全国茶業組合を組織して頭取に就任。同28年日本製茶会社を設立。外商を通さないで直接輸出が可能となる。同30年輸出高は4,309万ポンドに達する。同31年米西戦争勃発で米国が茶に関税をかけたため大打撃を受ける。茶税撤廃に尽力、同36年1月1日に廃止された。明治40年貴族院議員に選ばれた。(写真は稲葉博編著「かながわの100人」より)

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