コマツの「スマート農林業」主役は建機
コマツはICT(情報通信技術)建設機械のノウハウを使って、農業の効率化を目指す「スマート農業」を進める。ブルドーザーで水はけのよい傾斜地を整地するなど、最先端の建機で耕作を効率化する。土木工事で進む半自動制御などのノウハウを農業に応用し、第1次産業を支援する。

コマツの野路国夫会長らが都内で講演し、農業の「スマート化」の取り組みについて説明した。コマツは農業に活用できるICTブルドーザーを開発。先端に土質改良のための機構を据え付け、水はけのよい傾斜地を自動で整地する。作業時間を3割減らせる「直播(ちょくは)」と呼ぶ稲の種まきにも使えるという。
ダンプに土を載せる建機「ホイールローダー」を使った耕作放棄地の改良などの取り組みも進めている。1台の機械で整地などいくつもの作業をこなすことを目指す。野路会長は「従来の農業機械ではできないことを実現し、建機を使ってイノベーションを起こす」と語った。
林業では石川県との連携で進める「スマート林業」が実用化に近づきつつある。ドローンで山林の画像を撮影すれば木材の種類や本数、長さなどが一度に計測できる。これまで作業者が山林に入り、1本ずつ計測していた作業を自動化し、省力化を目指す。

スマート林業については「実際に山に行かなくても計画を立てられるのが、ICTやクラウドの威力」(コマツの三谷典夫改革室主幹)という。取得したデータはコマツの林業の機械と連携し、遠隔で作業指示を出したり、伐採作業をしたりしながら、その場で木材の販路を決めることもできる。
農業のスマート化でコマツと協業するソフト開発のオプティムは、「人工知能(AI)やIoT、ロボットで最も変わるのが農業」(菅谷俊二社長)と強調。みちのく銀行と組んでドローン画像で雑草を検知する取り組みや、佐賀市と取り組んだ農地情報の収集などの事例を紹介した。生産者がつながる「スマート農業アライアンス」を通じ、農業の効率化に力を入れていくと説明した。
コマツは15年、ICTを使った施工支援「スマートコンストラクション」を始めた。地形の3次元データをドローンで計測し、半自動制御の油圧ショベルやブルドーザーを使って設計図面どおりに施工する。18年6月末までに国内で累計5500以上の建設現場で導入した。
野路会長は「ロボット化や無人化、自動化自体が目的ではなく、農業生産法人の生産性の向上が狙い」と語った。農業の分野ではAIやクラウドなどを生かしたサービス提供が相次いでいるが、実際に現場でどれだけ役立つのか分からないところがある。
人手不足や高齢化に悩む農業生産者の生産性を高め、「もうかる1次産業づくり」を実現することが、コマツのスマート農業に求められている。
(企業報道部 牛山知也)