2018年9月19日(水)

化石ハンター小林快次に聞く 恐竜が遂げた3つの大進化
日経サイエンス

コラム(テクノロジー)
科学&新技術
2018/7/28 6:30
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 恐竜は地球史上で、最も劇的な進化を遂げた生物だ。今から約2億5000万年前に地球上に現れた当初は体も小さかったが、やがて巨大化し、翼を得て空へと進出。姿形も多様化し、地上を席巻した。一体、何が恐竜をここまで進化させたのか。国内外のフィールドで数多くの恐竜化石を発見し、「ファルコンズ・アイ(はやぶさの目)」の異名を取る化石ハンター、小林快次・北海道大学准教授に聞いた。(文中敬称略)

小林快次・北海道大学准教授

小林快次・北海道大学准教授

 「恐竜という生物を特徴づけているのは、それが生物の進化史上でどれだけすごいことを成し遂げたのかということです。通常の種の分化をはるかに超えた大進化です」と小林は指摘する。

 進化生物学において、種の分化以上の大きな進化や絶滅などを「大進化」と呼ぶ。恐竜が成し遂げた大進化は「巨大化」「鳥化」「多様化」の3つ。恐竜はあるものは体長30メートルに達し、あるものは飛翔(ひしょう)の能力を獲得して、今の鳥類へとつながった。

 「こうした大進化はどのように起きたのか。骨の含気化に大きな原因があったのかもしれません」と小林は言う。含気化というのは、骨の内部が空洞化することだ。恐竜は気嚢(きのう)という空気の袋を体のあちこちに持っており、一部は骨の中にも入り込んでいた。

 気嚢と肺を使う恐竜の呼吸システムは、肺だけを使う哺乳類より効率が高く、恐竜の巨大な体をつくる高い成長率と、その維持に必要な優れた代謝メカニズムをもたらした。気嚢はさらに体の骨を軽くして飛翔に向いた体をつくり、それは現在の鳥類にも引き継がれている。恐竜が巨大化と鳥化という2つの大進化を遂げた理由の一つは、この気嚢システムにあったとみられる。

恐竜は共通祖先からまず「鳥盤類」が分かれ、残りが植物食の大型恐竜「竜脚類」と、肉食が基本の「獣脚類」に分かれた。今の鳥類は獣脚類から進化した

恐竜は共通祖先からまず「鳥盤類」が分かれ、残りが植物食の大型恐竜「竜脚類」と、肉食が基本の「獣脚類」に分かれた。今の鳥類は獣脚類から進化した

 恐竜のもう一つの大進化は、幅広い多様化だ。これまでに見つかった恐竜は1000種余りだが、実際にはその何百倍もの種がいたと考えられている。また特に植物食恐竜は、長い角を持つもの、背中にずらりと板を付けているものなど形のバラエティーが大きい。

 小林は「恐竜をあれだけ多様にした原動力の一つは種の存続です。多様な形というのは、異性をひきつける飾りなんです」と話す。「面白いのは、植物食の恐竜たちはかなり多彩に形の多様性を示しているのに対し、肉食を基本とした獣脚類には、それほど多様性がないこと。彼らにはその代わりに羽毛があって、それで異性にアピールしていたのではないか」。近年、鳥類から系統的に離れた恐竜でも相次いで羽毛が確認されている。鳥への進化と関係なく獲得した羽毛が、やがて飛翔にも使われるようになったということらしい。

 恐竜研究はこれまで欧米を中心に進んできたが、近年では日本を含むアジアや南米、アフリカなどで、化石の発見が相次いでいる。その1つが、北海道のむかわ町穂別で見つかった体長8メートルの大型恐竜の全身骨格だ。これほど大きく完全な骨格が日本で見つかったのは初めてで、「日本の恐竜研究史で最大の発見」(小林)だという。現在調査中だが、アジアを含めた世界の恐竜の進化のシナリオに大きな影響を与えるのは間違いない。

(詳細は25日発売の日経サイエンス9月号に掲載)

日経サイエンス2018年9月号

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出版 : 日本経済新聞出版社
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