勝利のメンタリティー(山本昌邦)

フォローする

W杯ロシア大会が日本サッカーに残したもの

(1/4ページ)
2018/7/26 6:30
保存
共有
印刷
その他

クルトワのように優秀なGKを持つことの重要性はベルギー戦で骨身に染みた=三村幸作撮影

クルトワのように優秀なGKを持つことの重要性はベルギー戦で骨身に染みた=三村幸作撮影

時の流れはせわしない。ついこの間、日本中を熱狂させたサッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会がもう遠い昔の出来事のように思える。そんな流れにあらがうわけではないが、もう一度ここで、ロシア大会が日本サッカーに残した意味について私なりに考えてみた。

大会前はネガティブな話ばかりだった今回の日本代表が、いい意味で世評を裏切ってくれたことに改めて感謝の気持ちを述べたい。特に2大会ぶりに決勝トーナメントに進み、世界3位のベルギーから2得点したことを最大限に評価したいと思う。2002年日韓大会、10年南アフリカ大会と過去2度、日本はベスト16に勝ち進んだけれど、どちらも無得点に終わった。今回もベスト8には進めなかったが、70分近くまで2点リ―ドを保ったあの試合は日本サッカーが最もベスト8に近づいた夜だった。あの興奮を味わわせてくれただけでも「本当に素晴らしいことをした」とたたえたくなる。

優秀なGK持つことの重要性

2点差を守りつつ、もっとうまく立ち回れていたらベスト8は夢ではなかったのだろう。ただ、それを個人の責任に帰するのもどうかと思う。

たとえば、GKの川島永嗣(メッス)に対する風当たりは強い。しかし、10年大会から3大会連続で日本のゴールを守り続けた川島を、この8年間、超えるGKを生み出せなかったことの方がよほど問題だと私個人は思っている。日本のGK育成の問題点を洗い出し、見直すべきは見直す。そこに全力を傾ける方がよほど前向きではないだろうか。

現在のJリーグには外国籍のGKがじわじわと増えている。アジア人枠や外国人枠を活用し韓国やオーストラリアやポーランドのGKが雇われている。その結果、若い日本人のGKが育ちにくい環境になっている。このまま放置すれば優秀な外国人のGKがどんどん増えて、日本人だったら誰でも日本代表のGKに呼ばれる状況になりかねない。

若い選手を育てるには時間がかかる。特に経験がものをいうGKは促成栽培などできない。フィールドプレーヤーならコンバートによって才能を伸ばすこともできるが、ポジションが一つしかないGKはGKをやる以外に成長しようがない。出番を与えずに上手になれといっても無理な相談だろう。

GKを育てること、優秀なGKを持つことの重要性はベスト8の夢を砕かれたベルギー戦で日本も骨身に染みてわかったはず。ロシア大会の最優秀GKに選ばれたクルトワ(チェルシー)が"サヨナラゴール"を狙った本田圭佑(パチューカ)のCKをキャッチ、そこからの超高速カウンターで日本は仕留められた。キャッチしてから得点まで10秒もかからないスーパーゴールを成立させたのは間違いなくクルトワだった。

あの失点に対して本田がショートコーナーを選択して香川真司(ドルトムント)あたりに渡していれば、デブルイネ(マンチェスター・シティー)が引き寄せられて何事もなくすんでいたという意見もあるようだ。

一理はあるが、私はあのクルトワのキャッチからスロー、デブルイネの高速ドリブルとボールのさばき、シュートを打たなかったルカク(マンチェスター・ユナイテッド)のスルー、そしてシャドリ(ウェストブロミッジ)のフィニッシュという一連のプレーに、詰めていけばいくほど立ち現れる、ベスト16まで進めるチームと、さらにその先に進めるチームのほんのわずかな差が見えた気がするのだ。本当に僅差ではあるが、埋めるとなると想像を絶する努力が必要な差が。

その差に絶望することはない。「ここからが遠い」のは確かだが、「ここまでは詰めた」という喜びが今の私は大きい。決勝トーナメントで勝つために必要な究極のレベルが見えてきたような気がするのだ。

面白くてわくわくするのは、日本のよさをさらに伸ばし、足りないと思えることを改善していけば、きっとこの壁は乗り越えられると確信を持てたからだ。

日本と対戦するチームは、コロンビアもセネガルもベルギーもなぜか本来の力を出せなかったという意見を大会中、しばしば耳にした。「日本をなめてかかったのが原因」といったニュアンス込みで。

  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

サッカーコラム

電子版トップスポーツトップ

勝利のメンタリティー(山本昌邦) 一覧

フォローする
タイ代表監督に就任し、ユニホームを手にポーズをとる西野朗氏。左はタイ・サッカー協会のソムヨット会長(7月19日)=共同共同

 サッカーの西野朗・前日本代表監督がこのほど、タイに渡って代表チームの指揮を執ることになった。アジア各国で日本のコーチや審判が指導や養成、強化の制度設計に携わることは今や珍しいことではない。それでも今 …続き (8/15)

南米選手権のエクアドル戦で、競り合う久保建(右)=共同共同

 6月のほぼ同時期、男子のサッカー日本代表はブラジルで行われた南米選手権(コパアメリカ)に、女子日本代表の「なでしこジャパン」はフランスで行われたワールドカップ(W杯)に参加した。男子は惜しくも得失点 …続き (7/4)

U―20日本代表はU―20W杯でエクアドル、メキシコ、イタリアと対戦する=共同共同

 6月、サッカーの日本代表は4台の“バス”をブラジル、フランス、ポーランドで走らせる。男子のU―20(20歳以下)、U―22(22歳以下)、フル代表、そして女子のなでしこジャパンである。それぞれ目指す …続き (5/23)

ハイライト・スポーツ

[PR]