2019年3月26日(火)

悩める日銀、市場が瀬踏み 緩和修正観測で円高に

2018/7/23 23:00
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日銀の金融政策を巡り市場が揺れている。緩和を柔軟化するとの一部報道を受け、23日の市場は長期金利が急上昇し、円高・株安になった。日銀は緩和長期化が金融機関に与える副作用の対策を検討するが、円高は2%の物価目標を遠のかせ、輸出企業の業績にも逆風となるだけに看過できない。30~31日に金融政策決定会合を控え、市場の瀬踏みを横目に「次の一手」を探る展開が続く。

0.080%に上昇した長期金利(23日午後、東京都中央区)

市場が動いたきっかけは、20日夜に流れた一部報道だ。「日銀が長期金利の誘導目標の柔軟化を検討する」とし、7月にも利上げなど具体策を議論するという内容だ。

「寝耳に水だ」。複数の日銀幹部は観測報道へのいら立ちをあらわにした。物価がなかなか上がらず金融緩和の長期化が避けられない中、慎重に対応策を模索しているさなかだったからだ。

黒田東彦総裁も22日、出張中のアルゼンチンで「どういう根拠で報道しているかまったく知らない」と発言。日銀内では「総裁がいない間に、政策を決められるわけがない」と困惑が広がった。

だが市場はすぐに反応した。日銀の政策は現状維持が当面続くと見られていただけに、20日夜には日本の夜間市場で国債金利が上昇。23日に債券市場が開くと、誘導目標の新発10年物国債利回りが一時0.09%と先週末より0.06%上がった。

さらに日銀を慌てさせたのは円相場の動きだ。1ドル=110円台後半へと1円50銭以上の円高が進んだ。折しも貿易戦争を巡り米トランプ大統領がドル高をけん制する発言をしていた。日経平均株価は下げ幅が300円を超えた。輸出企業の業績に逆風が吹くとの見方が広がり、リスク回避の動きが活発になった。

円高の流れが強まれば景気に冷や水を浴びせかねない。さらに輸入品の値下がりを通して物価にも下押し圧力がかかる。日銀はすかさず「非常手段」に打って出た。

23日の午前10時10分、指定した金利で無制限に国債を買う「指し値オペ」を約半年ぶりに通知した。市場金利を抑え込む特別な金融調節だ。

日銀は指し値オペを通してゼロ%程度の誘導目標の実現を狙った。実際、市場は「日銀は姿勢を変えていないというメッセージを示した」(東海東京証券の佐野一彦氏)と受け取った。

日銀内では今後、30~31日に予定する7月の政策決定会合に向け詰めの作業に入る。日銀の委員の間で争点に浮上しているのは「今の政策を現行の枠組みでどこまで続けられるか」だ。

物価は厳しい状況にある。4月以降の値上げの動きは鈍く、日銀は31日に物価上昇率の見通しを改定する方針だ。18年度は4月時点の1.3%から1%前後に、19年度は1.8%から1%台半ばに下げる。この結果、2%への到達は20年度以降になる公算が大きい。

物価目標の達成が20年度なら異次元緩和は計8年に及ぶが、状況次第で「さらに長引くおそれもある」(日銀幹部)。

物価目標の達成を見通せない一方で、緩和の副作用への配慮をしないといけない。銀行の収益が悪化し、国債市場では取引が停滞。スルガ銀行の不正融資についても「超低金利の弊害が出た」とする声まで聞かれる。

日銀が政策調整を急ごうとする背景には政治のスケジュールもある。まず9月の自民党総裁選。政府・日銀は一体で政策を推進してきただけに、日銀は9月の決定会合では動きにくい。

来年も4月に統一地方選、7月に参院選、10月には消費増税を控える。「先へ行けば行くほど政策の修正は困難になる」(SMBC日興証券の末沢豪謙氏)。調整を先延ばしして副作用を蓄積させてはいけないが、調整の結果として円高を招く事態も避ける必要がある。

日銀は黒田総裁の帰国翌日の25日、雨宮正佳副総裁らと決定会合に向けた最終調整に入る。事務方は国債や上場投資信託(ETF)の買い方なども含め様々な素案を準備する。市場の反応もにらみながら難しい判断を迫られる。

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