FCAのマルキオーネCEO、想定外の交代
後任にジープのマンリー氏

2018/7/22 4:42
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【フランクフルト=深尾幸生】欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は21日、セルジオ・マルキオーネ最高経営責任者(CEO)の後任にジープを統括するマイケル・マンリー氏を昇格させる人事を発表した。マルキオーネ氏は2019年に退任すると公言していたが、このほど実施した手術後の経過が思わしくなく、前倒しでの交代となる。

FCAの新CEOに就任したマイケル・マンリー氏(3月、ジュネーブ国際自動車ショー)

FCAの新CEOに就任したマイケル・マンリー氏(3月、ジュネーブ国際自動車ショー)

瀕死(ひんし)だった名門自動車会社を建て直した名物経営者が思わぬかたちで表舞台を去る。マルキオーネ氏は右肩の手術をしたと伝えられていたが、予期せぬ合併症が起き、21日にかけての数時間でひどく悪化したという。FCAは発表文で「深い悲しみとともに伝える。マルキオーネ氏は復帰できない」と明らかにした。

同日付でCEOに緊急登板したマンリー氏はFCAの中核ブランドのジープのトップを務めている。6月に開いた中期経営計画説明会ではマルキオーネ氏の次に登壇し、有力な後継者候補の1人とみられていた。

22年までの中計はマルキオーネ氏のもとで策定済みで、マンリー氏はこれを指針に経営にあたる。とはいえ会社の顔であり、頭脳であり、精神的な支柱だったマルキオーネ氏の予定より早い引退はFCAにとってショックが大きい。

04年の就任以来、「辣腕交渉人」として多額の負債を抱えたフィアットと経営破綻したクライスラーを再生した手腕に自動車業界や市場の評価は高い。

FCAのマルキオーネCEO(左)とエルカン会長(6月、イタリア・バロッコ)=ロイター

FCAのマルキオーネCEO(左)とエルカン会長(6月、イタリア・バロッコ)=ロイター

マルキオーネ氏はイタリアに生まれ、カナダで教育を受けた。国際会計事務所などカナダとスイスでキャリアを重ね、会計士と弁護士の資格を持つ。スイスの検査・認証大手SGSの再建でみせた手腕がフィアット創業家の目に留まり、社外取締役となったのが始まりだ。

就任時は「門外漢につとまるのか」と危ぶむ声もあった。結果的にCEO在任期間は14年間にわたり仏ルノーのカルロス・ゴーン氏や独ダイムラーのディーター・ツェッチェ氏を上回る。

その経営手法はM&A(合併・買収)とスピンオフ(分離・独立)、そして会計士ならではの徹底したコスト管理に代表される。就任直後に巨額の負債を抱えた自動車部門をGMに売りつけようと交渉し、違約金を勝ち取り再建の原資にした。

クライスラーへの出資・統合は自己資金の拠出を抑えながら実現。「生き残りには規模が必要」との持論のもと、実現こそしなかったが、独オペルの買収やGMとの統合も仕掛けた。

6月の中計発表会では「残る仲間に残す最大の遺産は有言実行という文化だ」と満足そうに話していたのが印象的だった。創業家出身のジョン・エルカン会長は21日の声明で「セルジオは賢明なリーダーで、比類のない手本だった。変化を恐れない勇気を持つこと、発想を変えることを教えてくれた」と交代を惜しんだ。

マンリー新CEOはマルキオーネ氏が再建したFCAをどのように経営するのか。しかし、まずはマルキオーネ氏の一日も早い回復を祈るばかりだ。

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