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隣の音は聞こえない 立命館大の空間分割システム(もっと関西)

ここに技あり

体育館の壁に取り付けたスピーカーに向かい、2つの踊りのサークルが練習に汗を流す。一方はストリートダンス、もう一方はよさこいソーラン。両者の間隔は1メートルもないが、それぞれの正面にあるスピーカーから流れる曲を聞きながら、おのおののリズムで踊る様はまるで見えない壁で仕切られているかのようだ。

滋賀県草津市にある立命館大学びわこ・くさつキャンパス。運動拠点であるBKCスポーツ健康コモンズでは、複数の学生ダンスサークルが空間を物理的に仕切ることなく違う音楽を聴きながら練習する光景が繰り広げられる。

「音で空間を分け、異なる運動ができるシステムを作れないか」。同大学情報理工学部で音の研究に取り組む西浦敬信教授は、音による空間分割に取り組んだ経緯を語る。同大学は2015年度から「運動の生活カルチャー化による健康増進」プロジェクトを進めており、同教授は「音で貢献したい」と考えた。

西浦研究室が街角で踊っている人に聞くと、「音楽がうるさい」と言われた経験のある人が多いことが分かった。「音を特定の人にだけ伝わるようにすれば迷惑にならないし、狭い空間の効率的な利用にもつながる」(西浦教授)。そこで考えたのが既存の超音波スピーカーを使う空間分割システムの構築だ。

超音波は直進する特性がある。人間が聞き取ることのできる音の振幅を人工的に変調し、それを超音波に乗せて発する。空気中を進むうちに、変調音と超音波の振幅の差がうなりとなって、人に聞こえる音に復調する。これが超音波スピーカーの原理だ。

同研究室は従来、このスピーカーを使った効果音作りなどを研究してきた。音による空間分割では、音楽のように複雑な音を超音波に乗せても、少ないロスではっきり伝わるようにする音源作りや変調方式の研究を進めた。

研究は実用段階に入り、屋外のラジオ体操で、音楽が参加者にだけ聞こえる使い方も京都市内で実施している。

研究は進化する。運動着の肩の部分に薄型超音波スピーカーを付け、常に耳元を狙って音を発するウエアの開発も一例だ。イヤホンで耳をふさがず、音漏れも気にせず安全に練習できるようにする。

自前のスピーカーも開発する。スピーカーの表面が凹型に変形するようにし、音が広角にも伝わるフレキシブル超音波スピーカーで、人の動きを追跡する機能も持つ。現在、事業化を模索中だ。

「ゆくゆくは空間を運動から趣味、子育て、憩いと、音で分けることで一つの空間を皆で共有できるようにしたい」。音によって多世代が交流できる社会を目指す。

文 大阪地方部 野間清尚

写真 松浦弘昌

 カメラマンひとこと 離れた所から撮影しているとテンポが違う2つの音楽が聞こえてくる。だが、スタイルが異なる2つのダンスグループは相手のリズムにつられることはない。不思議に思い近づくと、ある一定のエリアに入った途端、片方の音楽が聞こえなくなった。スピーカーで分けられた空間で、それぞれ軽快なステップを踏む学生の躍動感をとらえた。

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