2018年11月16日(金)

女性ハッカーの輪広げる NTTグループ研究者の中島さん

IoT
2018/7/23 11:30
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主人公の女子高生がサイバー攻撃を未然に防ぎ、ホワイトハッカーとして大活躍する――。こんな小説の世界にあこがれ、自らが「正義のハッカー」となった女性がNTTグループにいる。中島明日香さん(27)。広大なインターネット空間には、様々な危険の芽が潜む。ネット万能の時代だからこそ、安心できる社会の実現に役立ちたいと日々研さんを積む。

NTTセキュアプラットフォーム研究所の中島明日香さん

■小説の主人公にあこがれて

年間300冊を読むほど本の虫だった。父の転勤で暮らした米ニューヨークで、14歳の中島さんがたまたまネットで出会った本が七瀬晶さんの「プロジェクト・セブン」。女子高生ハッカーが世界を救うという内容にくぎ付けになった。

「パソコン1台で世界を変えることができるんだ」。それまで興味が無かったIT(情報技術)の世界が目の前に広がった。帰国後、情報セキュリティーをキャリアにする考えは固まり、慶応大学環境情報学部に入学。防衛庁出身でセキュリティー研究で知られる同学部の武田圭史教授に「サイバー攻撃に関する研究がしたい」と直接メールを送ったのは入学からわずか4日目だった。

学生時代には米グーグルやマイクロソフトでインターンに参加し、プログラミングやセキュリティーの現場を肌で感じた。だが、就職先に選んだのは外資系ではなくNTTセキュアプラットフォーム研究所(東京都武蔵野市)だった。「セキュリティーに関する先端の研究をしていて、自分の技術もじっくり磨けると思った」からだ。大学院卒が多い研究職の中で学部卒の女性は珍しい。

ソースコードに欠陥があった場合、コピーしたソフトをつくると、そこにも欠陥が起きる。こうした不具合をどうしたら防げるかなどを研究した。マイクロソフトの「ウィンドウズ」の脆弱性を見つけたこともある。国内外の学会で研究成果を発表し、海外も含めて特許も取得した。

■女性セキュリティー技術者の団体を立ち上げ

学生時代にパソコンと向き合うようになってから、ずっと違和感を持っていたことがある。研究室を見渡しても男性ばかり。勉強会でも女性は自分1人、というのが当たり前だった。こんな状況を変えたいと14年、女性のための団体「CTF for GIRLS」を立ち上げた。

ネットを使う人は男女の数が同じくらいなのに、そもそも理系を志す女性が少ないし、セキュリティー技術のトップクラスは男性ばかり。「学生やワーキングマザーを巻き込んでこの分野に関わる女性を増やし、ハイレベルな人を輩出したい」と志は高い。韓国や台湾、米国などの団体とも交流し、グローバルな女性の輪ができつつある。

中島さんが所属するセキュリティインテリジェンスグループの波戸邦夫グループ長は「セキュリティーは一般の人には分かりづらい世界。研究にひた向きで求心力がある中島は、次を目指す女性たちにとっても必要な存在になっている」と評価する。

中島さんが目下取り組むのは、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」のセキュリティーだ。家電製品から自動車まで、ネットにつながるモノが増えれば増えるほどハッキングによる情報漏洩などの危険性は増す。

「攻撃者よりも先にソフトやサービスの危険性を指摘して、ユーザーの安全を未然に守りたい」。こんな思いは、あの小説を読んだ14歳の頃のままだ。人々の暮らしの中でネットの存在感がますます大きくなる今、「女性ホワイトハッカー」への周囲の期待は高まり続けている。

(企業報道部 佐竹実)

[日経産業新聞7月23日付]

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