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医療機関甘い水害対策 西日本豪雨で95施設被災

西日本を襲った記録的な豪雨は、医療機関の水害に対する備えの必要性を改めて浮き彫りにした。広島、岡山など6府県の95施設が浸水や断水の影響を受け、患者の受け入れができない事態も生じた。今もなお復旧作業が難航している病院や、従来の医療機器が整わないまま再開した診療所もある。

浸水した病院の片付けをする職員ら(18日、岡山県倉敷市真備町地区)

「一刻も早く再開したいが、復旧作業がなかなか進まない」。病床数が80床ある岡山県倉敷市の真備町地区で唯一の総合病院「まび記念病院」の事務部長、入沢晃己さん(60)は険しい表情を浮かべる。

豪雨で付近の川が氾濫し、外来受付などがある1階が完全に浸水。入院患者と職員ら100人以上が取り残され、自家発電設備やレントゲン、磁気共鳴画像装置(MRI)も水没した。

市のハザードマップは病院付近で高さ5メートル以上まで浸水する可能性を指摘していたが、過去の水害はすべて1メートル未満だった。外部電源とつなぐ設備は1メートル以上の高さにあったが、浸水して今も電気は使えない。入沢さんは「ここまで水が来るとは考えていなかった」と想定の甘さを悔やむ。

入院患者は全員、岡山市などの病院に移ってもらった。現在も職員ら数十人が土砂や壊れた機器の撤去作業を続けるが、診療再開のめどは立たない。糖尿病治療などで通院していた小上孝志さん(69)は車で約40分かかる別の病院に通う。「自宅が浸水し片付けが大変な中、遠い病院に行くのは一苦労」とこぼす。

厚生労働省によると、豪雨で浸水や断水、停電の被害を受けた医療機関は広島、岡山、愛媛など6府県で95施設。19日正午時点でなお27施設が自衛隊などの給水支援を受けながら対応している。

広島市安佐北区で外科や耳鼻科などを専門とする診療所「山下医院」は断水を免れ、発電設備も2階にあったため無事だった。しかし1階には土砂が流入し、ピンセットやガーゼ、包帯のほか、心電図などの医療機器も使用不能に。交通インフラの寸断で物流が停滞し、診察に必要な器具も十分に補充できなかった。

診療を再開したのは豪雨から1週間後の13日。土砂に埋もれたレントゲンなどは今も使えない。担当者は「精密検査はできず通常の診察とはほど遠い」と肩を落とす。

倉敷市内で2階まで浸水した薬局は過去10カ月分の処方箋が水に漬かり、顧客のデータを保存していたパソコンも故障した。顧客データはバックアップが残っていたがパソコンの新調が必要で、ぬれた処方箋を一枚一枚乾かす作業にも追われる。経営者の男性(58)は「予期していなかった事態。重要書類の保管方法など対策を見直さなければならない」と話した。

治療継続確保へ 専門家「発電機・大型検査機を上層階に」 


 医療機関は水害にどう備えればいいのか。神戸学院大の中田敬司教授(災害医療)は「入院患者への治療を途切れさせないため、ライフラインを確保することが最重要」と指摘する。
 中田教授によると、中高層の建物の屋上などに設置する高架水槽は、水をくみ上げるポンプが浸水すると使えなくなるため、配水管の圧力で水を出す「直結直圧方式」の水道を併用することが望ましい。浸水時に故障の危険がある大型検査機器類のほか、非常用の自家発電装置はなるべく上層階に置くべきだという。
 手術室や診察室はドアから水が入らないよう、防水弁を設置するなどの工事も求められる。
 通信用に無線や衛星電話も備えると効果的だが「非常電源と同様に、使い方の確認や点検を怠らないことが大前提。いざという時に使えなければ意味が無い」と話す。
 平時から緊急時の患者の搬送方法など、災害拠点病院と連携し訓練することも重要だという。支援が来るまで時間がかかることも想定され、「非常食や薬などを上層階に分散して備蓄し、最低限の治療を数日間施せるように整備する工夫が必要だ」と強調した。

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