2018年12月16日(日)

シェアビジネス進める規制を
(WAVE)宮田拓弥氏

コラム(ビジネス)
2018/7/23 6:30
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ここ数年、サンフランシスコでの移動手段はウーバーテクノロジーズに代表される「乗用車のライドシェア」が主流だった。それがわずか数カ月で一変した。

スクラムベンチャーズ代表
日本と米国でスタートアップを複数起業後、ミクシィ・アメリカの最高経営責任者(CEO)を経て、2013年にスクラムベンチャーズを創業。50社超の米国のスタートアップに投資。

道を通る多くの若者たちは小型の二輪の「電動スクーター」に乗って移動するようになった。いわゆるキックスケーターのような形をしているが、電動のため、地面をキックする必要もなく街中をスイスイと進む。これらは個人が所有しているのではなく、ウーバーなども出資するライムやバードなどのスタートアップが提供する「シェアリングスクーター」だ。

私も市内では渋滞の影響を受けやすいウーバーやリフトの利用をやめ、シェアリングスクーターを使うようになった。アプリを立ち上げて近くにあるスクーターを見つけ、QRコードをスキャンするだけですぐに乗れる。渋滞を気にしなくてよいため、市内での移動が驚くほど快適になった。

しかし、この新しいイノベーションは新しい問題も引き起こした。どこでも乗り捨てられるため、瞬く間にいろいろなロゴの入った電動スクーターが数百台単位であちこちにあふれてしまった。

サンフランシスコ市の交通局は素早く手を打っている。スクーターの数、ユーザーの教育、低所得者への対応など、明確なルールを策定し、許認可制を導入することを発表した。シェアリングスクーターは今年3月から一気に増えたが、この審査が済むまでいったん街から姿を消している。

禁止するわけではなく、「イノベーションを進めるための規制」といえる。交通局は「サンフランシスコは交通機関のイノベーションを支持します。しかしながら市民の安全が第一です」との声明を出している。

同様にルールがないまま急増したウーバーなどのライドシェアも、その後に適切な規制が導入されたことで新たな交通インフラに根付いている。最大手のタクシー会社が倒産するなど既存の産業には大きな影響を及ぼしたが、市民はタクシーが走っていない地域でもすぐに移動手段が確保できるなど、これまでになかった大きな価値を生み出している。

日本では新しい民泊の法律が施行された。ごみ出しや騒音などの近隣トラブルが増えたことで新しいルール作りをした格好だ。

しかし、学校周辺で平日の営業ができない、大型連休や夏休みの期間は営業ができないなど、がんじがらめの規制になってしまい、最大手の米エアビーアンドビーでは日本の登録が急減してしまったという。ルールを策定したことは素晴らしいが、結果として「止める規制」となってしまっているようだ。

創業からわずか10年のエアビーは世界最大のホテルチェーンであるマリオットを大きく上回る在庫を抱え、世界最大の宿泊ソリューションとなっている。それまでつなぐことができなかった「空いている部屋」と「部屋が必要な旅行者」を結びつける全く新しい価値を生み出しているのだ。

イノベーション、つまり新しいものは常にそれまでにあったもの、既得権益からの反発を受ける。しかし、日本でも「市民にとっての本質的な価値」を判断基準として「進める規制」という考え方が広がってほしい。

(日経産業新聞 2018年7月19日付)

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