20日は土用の丑(うし)の日。稚魚の深刻な不漁の影響で、例年以上にウナギが品薄になっている。卸値の高騰を受けて、値上げに踏み切る料理店も多く「うな重」は気軽に口にできない食べ物になりつつある。それでも、あの甘辛いタレの味わいは捨てがたい――。そんな声に応えようと、今年も工夫を凝らした代替品が登場した。
ウナギの卸値は昨年比で4割も高い。東京・日本橋の老舗「大江戸」のうな重「極上」は1人前9千円。昨年の7200円から1800円値上げした。一番人気の「うな重」も3600円から4千円に。10年前の2倍の値段だという。
9代目店主の湧井恭行さんは「もっと値上げしないと採算が合わないが、お客が離れてしまう」と頭を抱える。
名古屋市内でうなぎ料理店を展開する「しら河」は2013年以来5年ぶりに価格を見直した。ご当地名物「ひつまぶし」は300円値上げし、2750円に改めた。
森田大延社長は「据え置きができないか試行錯誤したが、仕入れ値の上昇が激しく、泣く泣く値上げした」。
スーパーの「アピタ」や「ピアゴ」を展開するユニーは今年から「土用の牛の日」と称して、牛肉を前面に押し出す。
20日の新聞折り込みチラシや精肉売り場では、おひつのご飯にいためたカルビを乗せた「ひつまうし」や、厚切りステーキを使った「ステーキ重」を提案。広報担当者は「ウナギの仕入れが少なくなったので、同じようにスタミナのつく牛肉に目を付けた」と話す。
イオンリテールも「代替かば焼き」としてサバや豚バラ肉をかば焼きにして売り出している。
なかでも目を引くのがナマズのかば焼き。ウナギの不漁を背景に近畿大が生産に力を入れ、16年に本格販売を始めた。キャッチコピーは「近大発のパチもんでんねん。」。「餌や水質の研究を重ねた」(近畿大)という。見た目の差はほとんどなく、食感もウナギに似ている。
短文投稿サイト、ツイッターには今月になって「うなぎ絶滅キャンペーン」と名乗るアカウントが出現した。アカウントの真意は不明だが、ウナギの漁獲量や取引価格の推移などを伝えている。20日までに約1万5千人がフォロー。SNSユーザーの関心も高いことをうかがわせる。
中央大の海部健三准教授(保全生態学)は「ウナギは減少傾向にあり、近い将来食べられなくなる可能性もある」と指摘する。日本や韓国、中国、台湾は2015年からシラスウナギの養殖量の上限を定めているが、海部准教授は「科学的な根拠に基づいたものではない。持続的な食利用には上限量を見直す必要がある」と話している。