2019年8月21日(水)

旭化成、川下に向かう変革者に 米自動車シート材メーカー買収へ

2018/7/19 19:02
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旭化成は19日、10億6千万ドル(約1200億円)を投じて米自動車シート材大手、セージ・オートモーティブ・インテリアズを買収すると正式発表した。人工皮革を製造する旭化成は買収を通じ、完成車メーカーとの接点を増やす。電気自動車(EV)の普及や自動運転技術の登場で自動車産業が変わる中、素材を生産する川上から川下へ近づくことでビジネスチャンスを広げる。

「(自動運転やEVで)車内空間は5~10年後に大きく変わる。変化を待つのではなく、こちらから提案していく」。19日、都内で開いた記者会見で旭化成の小堀秀毅社長は買収にかける意気込みをこう表現した。

旭化成は米投資会社クリアレイク・セージ・ホールディングスから約790億円でセージ株を全株取得する。セージが抱える純有利子負債を含めた買収総額は約1200億円。旭化成の大型買収は2015年に約2600億円で取得した米電池部材子会社、ポリポア・インターナショナル以来となる。

巨額買収に踏み切るのは、自動車のあり方が変わる中でカーシートなどの主要部材も大きくその役割や機能が変わるとみられるからだ。自動運転車であれば、運転手はハンドル操作などに費やす時間が減り、より快適に車内で過ごせるよう求めるようになるとみられる。カーシェアリングが広がれば、不特定多数の人が利用してもいいように、より汚れにくい素材のニーズが高まる。

EVなどの次世代自動車では旭化成の強みであるセンサー技術を活用した機器をシート材に組み込めば、運転席に座るだけで体調などを測定することが可能になる。

セージは複数の素材を組み合わせたデザイン力の高さなどから、独BMWなどに供給実績がありカーシート市場でシェア首位を握る。旭化成はシート状の人工皮革「ラムース」を製造し、セージに供給していた。

セージの売上高は約530億円。米国のほか欧州や中国などにも製造拠点があり、増収が続いている。旭化成はセージの販路を活用したラムースの販売拡大を見込むほか、「川上から川中に入っていきたい」(小堀社長)と語るように、完成車メーカーとの関係を深めて次世代車の開発でより優れた素材や部材の開発につなげる。

旭化成は16年から低燃費タイヤ用合成ゴムなど世界シェア首位の製品やナイロン、樹脂といった事業の枠を越えた製品をまとめて自動車メーカーに提案する組織を発足。買収を機に完成車メーカーへの売り込みを強めて、25年度に自動車関連の売上高を15年度比3倍の3千億円に引き上げる。

素材など川上の事業が多岐にわたる旭化成にとって、最終顧客との接点の少なさが課題だった。

同様の動きは素材メーカーにも広がる。

帝人は17年、自動車向け樹脂部品を手がける米コンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックス(CSP)を買収した。帝人の炭素繊維と、CSPが得意とするガラス繊維強化樹脂(GFRP)の技術を組み合わせて自動車向け素材を提案する。すでに一部量産車への導入も決まった。

東レも炭素繊維の複合材を開発・加工するオランダのテンカーテ・アドバンスト・コンポジット・ホールディングを買収。手薄だった小型航空機や自動車などにも販路を広げようとしている。

川上から素材を供給する立場にとどまらず、より川下へ――。市場の変化に対応した素材メーカーの変身はこれからも活発になりそうだ。(世瀬周一郎)

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