2019年7月19日(金)

豪雨ダム放流の検証始まる 国「適切」、住民に怒り

2018/7/19 18:16
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西日本を襲った記録的な豪雨で、容量を超えそうになったダムで行われた緊急的な放流について、国土交通省は19日、住民への周知方法などが適切だったかどうかの検証を始めた。愛媛県内の2ダムで放流後に下流の川が氾濫し、住民計9人が死亡した。国交省は「放流は適切だった」としているが、住民の言葉には怒りと諦めがにじむ。

国交省四国地方整備局の職員から説明を受ける鈴木幸一愛媛大名誉教授(右から2人目)(19日午前、愛媛県大洲市)=共同

国交省四国地方整備局の職員から説明を受ける鈴木幸一愛媛大名誉教授(右から2人目)(19日午前、愛媛県大洲市)=共同

検証委員に選ばれた河川工学の専門家らが19日、浸水被害の大きかった愛媛県大洲市や西予市を視察。その後に開いた第1回会合で、四国地方整備局の担当者らがダムの豪雨対応を説明した。愛媛大大学院の森脇亮教授は「(放流の)情報を受け手側がどう捉えたのかしっかり検証していく必要がある」と強調した。

検証対象となった野村ダム(西予市)と鹿野川ダム(大洲市)は7日朝、流入量とほぼ同量を放流する「異常洪水時防災操作」を実施。両ダムは事前放流で水位を下げて大雨に備えていたが、流域の雨量が計画を1~2割上回り、ダム決壊の恐れが強まった。

野村ダムは7日午前2時半に所長が西予市側に放流の可能性を伝えた。放流開始予定時刻がいつ伝達されたかに関する国側と市側の説明は食い違っているが、連絡を受けた市は同5時10分に防災行政無線を通じて住民に避難を指示。同6時20分に放流が始まった。

鹿野川ダムも同5時10分に所長が大洲市に放流可能性を伝達。市は同7時半に住民に避難を指示し、その5分後に放流が始まった。

放流量は降雨による流入量を超えることはないが、野村ダムで最大毎秒1797トン、鹿野川ダムで同3742トンに達した。いずれも氾濫しないとされる「安全放流量」の約6倍だった。

第三者委の第1回会合で、ダム放流の情報の伝わり方について指摘があった(19日、愛媛県大洲市)

第三者委の第1回会合で、ダム放流の情報の伝わり方について指摘があった(19日、愛媛県大洲市)

放流によって下流の肱川水系は一気に増水。西予市野村地区の中心部で堤防が決壊し、約650戸が浸水、住民5人が死亡した。鹿野川ダムのある大洲市も肱川が氾濫し、約2800戸が浸水、住民4人が死亡した。

国交省治水課の担当者は「放流の操作は操作規則に基づき適切だった」としたうえで「避難時間を確保し、ピーク流量の減少にもつなげられた」と説明する。

だが住民の思いは複雑だ。大洲市東大洲地区の大原美佐子さん(83)は「満水になる前に水を流して空きをもっとつくっておけばよかったのに」と憤る。自宅の1階は7日朝、あっという間の増水で水没。身動きが取れないままクーラーのない2階で2日間を過ごし、避難所に移った。土壁が崩壊した自宅は住めそうにないという。

洪水でふやけた商品カタログや書類を日にさらす中山龍太郎さん。奥には廃棄となった自動車部品が並ぶ(19日午後、愛媛県大洲市)

洪水でふやけた商品カタログや書類を日にさらす中山龍太郎さん。奥には廃棄となった自動車部品が並ぶ(19日午後、愛媛県大洲市)

接客業の長田千穂さん(40)もアパート1階の部屋が水没したが「あれだけ降ったのだからしょうがない。現場の職員だけではどうしようもなかったのかもしれない」と諦めの表情。経営する自動車部品店が浸水した中山龍太郎さん(80)は、過去にも地域で洪水があったとして「当時の職員がもういないからノウハウも受け継がれていなかったのだろう」と泥だらけの店内を片付けながら、淡々と話した。

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