2018年11月18日(日)

「中国のグーグル」百度が狙う自動運転の覇権

CBインサイツ
米巨大ITへの逆風
コラム(テクノロジー)
(3/3ページ)
2018/7/23 2:00
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テンセントは17年11月に自動運転技術のプロジェクトを発表した。先述のように深圳での走行試験の許可を得た。

最終的には、最も質の高いソフトを持つ企業が最も成功することになるだろう。ソフトの質は運転データで決まる。百度が提携パートナーから得た運転データを活用し、中国で有益なデータを収集できるようになれば、ライバルよりも有利になるだろう。

■百度の外部投資

百度は自動運転車のスタートアップ企業にも多額の資金を投じている。投資先は全てアポロ連合に参加している企業だ。

百度は17年9月、3年間で100の自動運転プロジェクトに資金を提供する15億ドル規模の投資ファンド「アポロファンド」を立ち上げた。最初の投資先の一つは先進運転支援システム用の開発を手がける中国のSmarter Eye(北京中科慧眼科技)だった。百度は同社の1500万ドルの資金調達を率いた。

百度による自動運転技術スタートアップ企業への投資(12年~18年6月8日時点)

百度による自動運転技術スタートアップ企業への投資(12年~18年6月8日時点)

ハード機器のスタートアップ企業にも投資している。

・5月、赤外線センサーを手がけるHesai Tech(禾賽光電科技)のシリーズBの資金調達ラウンド(調達額3900万ドル)を主導した。

・4月、低速の無人自動運転車を開発するiDriverPlus(北京智行者科技)のシリーズBラウンドを率いた。

・16年8月、米LiDARメーカーVelodyne(ベロダイン)の総額1億5000万ドルの増資のうち、7500万ドルを拠出した。米フォード・モーターと折半したこの出資の狙いは、ベロダインのLiDAR量産化を支援し、価格を引き下げるためだ。LiDARは地図の生成や改良に使われる運転データを収集するため、百度は3Dマップのプラットフォーム構築でもベロダインの技術を使っている。

・17年3月、EVなどを開発する上海蔚来汽車のシリーズDラウンド(調達額6億ドル)を率いた。上海蔚来汽車は20年までに完全自動運転車を開発すると発表したばかりだった。

■社内の自動運転部門も強化

百度の売上高全体に占める研究開発費(自動運転の技術と人員への内部投資を含む)の割合はここ数年伸びている。同社は17年4~6月の決算発表で、AIと自動運転車技術の強化に伴い、販管費から研究開発費に支出がシフトした点についてこう説明した。

「当社はAI技術に重点投資しており、その大部分が研究開発だ」

研究開発費の増加は17年に計画した通りになった。同社の17年の研究開発費の割合は15.2%で、前年の14.4%からやや増え、過去8年間の平均12.5%を上回った。

ちなみに、グーグルの17年の研究開発費の割合は15.0%、テスラは12.0%だった。

百度の研究開発費:ほぼ一定だが、以前の水準よりも増加(売上高全体に占める研究開発費の割合、出典:百度)

百度の研究開発費:ほぼ一定だが、以前の水準よりも増加(売上高全体に占める研究開発費の割合、出典:百度)

研究開発部門の社員の割合も徐々に伸びており、17年には全社員に占める割合が52%と過去最高に達した。グーグルの比率は38%にとどまる。

百度、研究開発部門の社員の割合も上昇(全社員に占める研究開発部門の社員の割合、出典:百度)

百度、研究開発部門の社員の割合も上昇(全社員に占める研究開発部門の社員の割合、出典:百度)

さらに、百度は昨年10月、米シリコンバレーにふたつ目の自動運転技術の研究所を開設した。最終的には150人体制を目指すこの研究所は、同社の陣容拡大が今後も続くことを示唆している。同社の最初のシリコンバレー研究所では、200人の研究者が音声認識や自動運転車の開発に取り組んでいる。

■実用化に向けた試験と車両の開発

百度は自社の自動運転ソフトを試すため、米中の自動車メーカー各社と相次ぎ提携している。

1月には、体が不自由な人や移動が制限される高齢者向けの自動運転車の実証実験に乗り出すため、高齢者などを対象に送迎サービスを手がける米Access Services(アクセス・サービシズ)と提携した。

百度は中国のバスメーカー、King Long(厦門金龍連合汽車工業)と共同で、中国の観光地や空港など指定路線を走る「レベル4」の自動運転バスの開発も進めている。7月にはEVバス100台を量産する計画だ。バスは14人乗りで運転席はない。

商用車の生産では、アポロ計画に参加する中国の自動車メーカー、BAIC(北京汽車集団)と組み、アポロを活用して自動運転車を量産する。両社は19年までに「レベル3」(緊急時だけ運転手が操作)、21年までに完全に自動化された「レベル4」の生産に着手する。

自動運転の開発競争はますます激しくなるだろう。大手各社は相次いで自動運転車の台数を増やし、パイロットプログラムの計画は連日のように発表されている。

しっかりした運転データを持ち、自動運転のパイロットプログラムを間近に控えるライバルに比べると、百度にはなお課題が山積している。自動運転車を商業展開する大規模な配車サービス計画はまとまっておらず、滴滴が中国に持つような顧客基盤もない。

とはいえ、百度は広範な提携網とソフトウエアの共同開発手法を武器に、必要なデータを蓄積し、ハード機器や自動車の生産支援体制を築いてライバルに勝る可能性がある。

さらに、中国でのプレゼンスや、国からの信頼の厚さを考えると、百度は公道実験やサービス提供を進めやすい立場にある。

つまり、百度が中国での基盤を保ち、外国企業の参入障壁が高いままであれば、同社は今後も自動運転分野の侮れない勢力であり続けるだろう。

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