2018年9月23日(日)

「中国のグーグル」百度が狙う自動運転の覇権

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コラム(テクノロジー)
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2018/7/23 2:00
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■アポロの収益化

 アポロ計画で重要な点は、収益化できるかどうかだ。

 百度の李彦宏・最高経営責任者(CEO)は17年1~3月期の決算発表で次のように強調した。

 「アポロ計画の目標は将来の収益化のチャンスを広げることだ。これは未来の経済的価値をつくり出す実に妥当な道だ。オープンネットワークを収益化する方法はいくつか知られている」

 百度は実際に動き始めている。1月にはどんな車も自動運転車にできる後付け機器の販売について言及した。

HDマップ

HDマップ

 自動車のセンサーから集めたデータを使って生成するHD(高精細)マップは、自動運転に欠かせない。HD地図には車線の幅や交差点などの正確な情報が盛り込まれている。百度は中国で最も広範なモバイル地図サービス「百度マップ」を提供しており、13年からはHDマップの開発に取り組んでいる。このマップを自動車メーカーに販売し、サービス料を徴収するか、地図代を自動車費用に含めることを検討している。

 百度はこのHDマップをアポロに対応させるため、1月にオランダのカーナビメーカーTomTom(トムトム)と提携した。これにより百度は中国の地図とトムトムが提供する欧米のHDマップを連携させることが可能になる。

■ソフトウエアをオープン化しているその他の企業

 百度と同じような手法をとる自動運転車のソフト開発企業は他にもある。ただし、百度ほど広範な提携を誇る企業はない。

 主なオープンソースを次に列挙する。

・米ライドシェア大手のLyft(リフト):17年7月、自動運転車向けにプラットフォームを立ち上げた。現在の提携パートナーは10社に満たないが、カナダ部品大手Magna International(マグナ・インターナショナル)や米Aptiv(アプティブ)など、自動運転分野のリーダーが参加している。一方でリフトはウェイモや米Drive.ai(ドライブAI)など自動運転分野のスタートアップ数社とも提携している。

ボヤージュの自動運転車

ボヤージュの自動運転車

・米Voyage(ボヤージュ):同社はグーグルで自動運転の開発を主導したセバスチャン・スラン氏が創業したオンライン教育の米Udacity(ユダシティ)から独立した。米ウーバーテクノロジーズやテスラの事故を受け、自社の自動運転の安全技術を公開した。新興企業がもっと優れた安全技術を備えた自動運転技術を開発できるよう支援するのが狙いだ。ただ、ボヤージュはまだどの企業とも正式提携していない。

・AIスタートアップのコンマAI:オープンソースの自動運転プラットフォームを提供している。当初はテスラのオートパイロットをまねた機能を後付けできる最先端の運転支援キット「コンマワン」を開発していたが、米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)から法令順守を巡って警告を受け、16年にプロジェクトを中止した。

■中国の優位性

 中国は2010年代末までにAIの世界的なリーダーになろうと尽力している。

 中国政府はここ数カ月、多くの都市で自動運転車の規制緩和を進めている。ウーバーの死亡事故から数週間もたたないうちに自動運転車の公道実験を認める権限を地方政府に付与したのだ。しかも公道実験は国内メーカーだけに認められる。この判断により、百度などの中国勢は優位に立つ。

 百度は既に自社のソフトを公道でテストしている。中国政府は昨年12月、百度に対して北京の33カ所の公道で走行実験を許可した。道路の全長は65マイル。

 このほか、上海市は上海汽車集団(SAIC Motors)と電気自動車(EV)のスタートアップ、上海蔚来汽車(NIO、百度の提携企業)が公道実験を認めた。騰訊控股(テンセント)も深圳での公道実験を認められた。走行距離は公表していない。配車アプリの滴滴出行は自社の自動運転ソフトウエアを中国の観致汽車(Qoros)製の車に搭載し、国内の数カ所の公道で走行した。走行距離は明らかにされていない。

 さらに、中国科学技術省は昨年11月、百度を自動運転分野の国家プロジェクトのリーダーに認定した。百度と並ぶ中国屈指のネット大手、アリババ集団はスマートシティー、テンセントは医療分野のリーダーに選ばれた。

 米国勢はどうか。テスラはつい最近、上海に生産子会社も設立したため、中国の公道を走るテスラ車の数は増えるだろう。テスラ車には半自動運転機能が搭載されている。そのデータを自動運転技術にも生かせる。

 ウェイモはグーグルと中国当局との過去のいざこざが響き、まだ中国市場に参入していない。

■中国内での競争激化

 百度は自動運転技術のリーダーに認定されたが、他の中国IT大手も自動運転分野に参入している。

 まずは滴滴出行。16年8月にウーバーの中国事業を買収し、メキシコやブラジル、台湾、日本など世界各地で事業を展開している。

 従って、滴滴は独自のデータ収集源を持つ。2100万台を超える走行車両からデータを収集できるからだ。自動運転車を消費者に直販するのではなく配車サービスに活用して収益を上げることもできる。

滴滴がシリコンバレーに設立した研究所(カリフォルニア州マウンテンビュー)

滴滴がシリコンバレーに設立した研究所(カリフォルニア州マウンテンビュー)

 滴滴は3月、米シリコンバレーに自動運転技術の研究所を設立した。現時点での社員は約100人。5月にはカリフォルニア州から公道実験の許可も得た。中国でも公道実験を進めているが走行場所や距離は明らかにしていない。EVロボタクシーを開発するため、中国のEVベンチャー、CHJ Auto(CHJオート)とも提携している。

 アリババとテンセントも自動運転に乗り出しているが、まだ日が浅い。

 アリババは17年3月、コンピュータービジョンの専門家である王剛氏を自動運転プロジェクトの責任者に迎え入れた。これを機に中国での自動運転試験に着手し、今ではAI研究所で自動運転技術の専門家を50人増やそうとしている。

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