2019年5月23日(木)

洪水時の指定避難所不足 未明に混乱 倉敷市真備町

2018/7/18 22:32
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西日本を襲った記録的豪雨で甚大な浸水被害を受けた岡山県倉敷市真備町地区では、住民が避難所に殺到して定員を大きく上回るなど混乱が生じた。洪水時に使える避難所は緊急時に身を寄せる「緊急避難場所」を含めても4カ所のみで、車中泊や遠方の避難所への移動を強いられた住民も。土砂災害の危険から予定された場所が利用できない事態も発生し、水害時の想定のあり方に課題が浮かんだ。

小学校の体育館で避難生活を送る人たち(9日、岡山県倉敷市真備町地区)

約4600戸が浸水した真備町地区に、市が避難勧告を出したのは6日午後10時ごろ。高台にある指定避難所の市立岡田小(定員180人)の校庭はあっという間に車で埋まり、約千人の住民でごった返した。

7日午前1時半ごろ、子供5人を連れて避難した主婦(38)は住民で埋め尽くされた体育館に入れず、車中で一夜を明かした。「場所が全然足りなかった」

同じく指定避難所の市立薗小にも住民が殺到した。深夜に避難した三宅文子さん(64)は体育館のスペースが足りず、教室の机に突っ伏したまま眠った。「体がすごく痛かった」と振り返る。

同地区の堤防が決壊したのは7日未明。地区の4分の1以上が浸水する被害に、今回市は十分な避難スペースを確保できなかった。混乱の背景には想定の甘さもにじむ。

市が2017年に策定したハザードマップの想定と今回の浸水区域はほぼ同じだった。市は6日、メールなどで3カ所の指定避難所への移動を促したが、この3カ所の収容人数は計520人。1万人以上とみられる浸水地域の人口を受け入れきれなかった。やむなく指定外の施設に身を寄せ、その施設が浸水して救出される住民もいた。

災害発生時に一時的に身を寄せる「緊急避難場所」でも、二次災害の恐れから受け入れに混乱が生じた。同地区の真備総合公園には6日夜から7日未明、避難する住民の車が行列を作った。

公園は洪水時の緊急避難場所だったが、土砂災害警戒区域にも指定。市は大雨の状況で避難には不適切と判断、住民に移動を指示した。7日未明時点で避難していた約400人を一時的に受け入れ、同日昼からバスで避難者を別の避難所に移動させた。

18日時点で、真備町地区で被災者を受け入れている指定避難所は3カ所のみのまま。避難所となっている学校の教室なども使用し、当初想定していた人数を上回る約900人が身を寄せる。

同日時点でも1600人の住民が地区外の避難所で生活しているとみられ、片付けのために自宅と避難所を往復する生活にストレスを抱える被災者も。浸水した自宅に10キロ離れた避難所から車で通う原田笑子さん(74)は「往復だけで疲れ果てる」と嘆いていた。

市の担当者は「避難者数が想定を大きく超えていた。洪水時に使える避難所が圧倒的に少なく、今後の課題として改善策を検討したい」とした。

首都大学東京の中林一樹名誉教授(都市防災学)の話 洪水が起きた場合の避難者数などの想定は、地震に比べれば甘かった可能性もある。近年、大雨などの災害は増加傾向にある。最大限の被害を想定し、避難所の収容人員など具体的な対策の見直しを迫られる時期に来ている。

学校の耐震化や指定避難所の拡大などは早急に難しいこともある。避難所の不足時には民間施設や地元の寺や神社など、臨時で使用できる避難所を確保できる体制を整えておくことも必要だ。

▼指定避難所 災害対策基本法では帰宅できない被災者の避難先として、一時的に生活をする「指定避難所」を市町村が定めるよう規定。
 市町村が地震や土砂災害、洪水など想定する災害の種類に合わせて場所を決める。立地によって地震の避難所には指定されても、洪水の避難所としては指定されないことなどがある。岡山県倉敷市真備町地区の場合、洪水時の指定避難所は3カ所、緊急避難場所は1カ所ある。
 避難所の収容人数の算定について国は明確な指針を示しておらず、各自治体が計算している。
 国際赤十字などが定めた災害支援などに関する国際基準では、避難所の居住空間は最低限1人当たり3.5平方メートルと規定。倉敷市は1人当たり3平方メートルとしている。
 災害対策基本法では高齢者など特に配慮が必要な人を対象にした「福祉避難所」、一時的に災害の危険から逃れる「指定緊急避難場所」も基準などを定めている。

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