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7人制ラグビーW杯のカギ 岩渕代表総監督に聞く

20日開幕、米サンフランシスコで

7人制ラグビーのワールドカップ(W杯)が20~22日に米サンフランシスコで開かれる。2020年東京五輪のメダルを狙う男女日本代表の目標は、初の8強進出。男子代表ヘッドコーチ(HC)も兼任する岩渕健輔・男女日本代表総監督に、これまでの強化や、目指す戦いについて聞いた。

男女日本代表総監督の岩渕氏=日本ラグビー協会提供

――16年のリオデジャネイロ五輪で4位に入った後の男子日本代表の強化はどのように進めてきたのか。

「環境面で新しい試みをしてきた。日本ラグビー協会と(事実上のプロ契約となる)専任契約を結んだ選手が3人。それ以外の代表選手もほぼ全員が所属企業の理解などを得て(15人制でなく)フルタイムで7人制をプレーできるようになった。リオまでと大きく違う」

「チームの拠点となるグラウンドを決め、その近くに選手の住居や事務所を構える準備も進めている」

「選手の力そのものも高める」

――この2年、サーキット式の国際大会「ワールドシリーズ」ではやや苦戦が続いた。ニュージーランド人のダミアン・カラウナHCが5月に契約満了で退任。岩渕氏がHCを兼ねる形になった。

「カラウナHCはキックオフ時のポジショニングなどの細かいシステムや、技術的な指導、それぞれの試合への対応という面ではいいコーチングをしてくれた。ただ、フィジカル(身体能力)やパス技術など選手個々の成長という点は十分でなかった。この問題は本人ともずっと話し合ってきたが、退任の一番の理由になった。彼が残してくれたシステムはいいので、大きなところは今も変えていない」

「個の力が足りないのはリオ五輪のときも同じだった。狙っていたことが全てうまくはまり、4位には入ったが、プレッシャーが一番かかる最終日(の準決勝や3位決定戦)にいいパフォーマンスを出せなかった。そのときの選手の力を最大限に引き出すことは大事だが、選手の力そのものも高めないとメダルは取れない」

7人制男子日本代表は初の8強入りを目指す(日本代表候補チームとして出場した1日の国内大会)=共同

――どの部分を鍛える必要があるのか。

「被トライ数やタックル成功率など、チームのスタッツ(各種データ)のほとんどが世界の16位くらいにとどまっている。これを上げなければいけないが、そのために一番足りないのはフィジカル。強豪国に体重で劣るだけでなく、20、30メートル走のスピードや、フィットネス(持久力)も負けている。(1日2度の)2部練習をグラウンド上で高い強度で行うこともまだできない。五輪本番より強度の高い練習を1日2度、3日連続でできるようにならないといけない」

「練習をただたくさんすればいいわけではない。そのための様々な取り組みを始めた。選手の唾液を毎日採取し、生化学者に分析してもらい、疲労度を測っている。睡眠の専門家や栄養士もつけ、選手の血液も定期的に採取する。9月からは心理的なアプローチも始める。チームのベースを鍛え、ラグビーのスタッツの向上につなげる」

――グラウンド上ではどういう戦い方を目指すのか。

「スタイルとしては守備が大前提になる。しつこく動き続けることが大事。今後はいくつかのディフェンスのパターンを使い分けられるようにならないといけない。多くのオプションを用意して選手が使い分けることも、リオ五輪で出た課題だった」

「しつこく動くことは攻撃でも同じ。人とボールを動かして、スペースを取ることがポイント。2次元の動きではなく、キックも含めて3次元的なボールの使い方もやっていきたい。キックもうまく使いたい」

攻守とも「蜂」のように動く

――「蜂」をチームのキーワードに掲げている。

「蜂は1日に100キロ飛ぶ。しつこく追いかけ、一撃必殺で相手をやっつける。集団として戦うこともできて集散も速い。そのように攻撃でも守備でも動き続けたい」

――今回のW杯の目標は。

「8強を目指す。五輪でメダルを取るには、11月開幕の来季のワールドシリーズでも何大会かで8強に入り、来年開幕のワールドシリーズで1、2大会は4強に入らないと厳しい」

――リオ五輪で10位に終わった女子のこの2年間は。

岩渕総監督は「初戦の最初の4分間がカギ」と強調する

「12年に女子7人制の本格的な強化を始めたときはまだアジアでも強豪ではなかった。合計1000日の合宿などの急激な強化の結果としてリオ五輪に出場できたが、そのままでは選手、スタッフの負担が大きく、環境を変えないといけなかった」

「リオ五輪後は埼玉県熊谷市に代表の練習拠点をつくってワークライフバランスを整えたり、子供を持つ選手が代表に参加しやすい制度もつくったりした。ワールドシリーズの1大会を日本(北九州市)で開催できている点も大きい」

――今年、ワールドシリーズの全大会に参加できる「コアチーム」から1年で降格した。

「結果は出ていないが、方向性としては後ろ向きではない。ワールドシリーズの後半は8強に入れるかもしれないという大会が増えた。リオまでは取り切れなかったトライも取れるようになってきた。ラグビーの知識の深い選手も増えている。W杯のメンバーは男子よりも女子の方が7人制の大会の出場数は多い」

「個人スタッツを見ても、何らかの特徴は出せるようになってきた。直近のワールドシリーズの大会では、中村知春(アルカス熊谷)がオフロード(タックルされながらのパス)の回数で、全選手中の圧倒的なトップだった。攻撃のスタイルは少しずつ出てきた」

「ただ、世界とのフィジカルの差は男子以上に大きい。パワーリフティングの専門家を呼んでトレーニングするなどしているが、まだ不十分だ。ここを向上させられれば、かなり戦えるようになる」

――W杯を戦ううえでの男女のカギは。

「初戦の最初の4分間だ。リオ五輪の(金星を挙げた)ニュージーランド戦も最初の4分間でリードしていた。一番、試合がタイトな時間帯にトライを取られると、前後半7分間しかない7人制では流れを取り戻すことが難しい」

「そのため、男子のグラウンド上の練習ではウオーミングアップを個人に任せ、いきなりキックオフの攻守から始めることにしている。最初の4分間の重要性は女子においても同じ。最初の時間帯を制して勝ちたい」

(聞き手は谷口誠)

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